過剰診療

 交通事故で傷害を負った時は、病院で治療を行い、通常では治療費は交通事故による損害として認められます。しかし、治療の必要がないにもかかわらず、複数の医療機関で治療を受けたり、診療行為が医師の裁量を明らかに超え、医学的必要性ないし合理性が否定される場合があり、それを過剰診療といいます。過剰診療となった場合、実際にかかった治療費の一部しか、交通事故の損害として認められないことがあります。

       

1 自由診療による治療が紛争の可能性 

   健康保険の場合、診療の内容について、健康保険法や保険医療担当規則に基づく様々な制約がありますが、自由診療では、医療関係法令の制約はあるとはいえ、診療行為について特に制約はありません。交通事故の場合、自由診療で治療が行われることが多く、過剰診療として治療費の必要性が争われることがあります。もちろん、治療によっては自由診療だからこそできる治療もありえますが、通常の場合、後日の紛争を考えて健康保険に切り替えるべきです。

2 過剰診療に関する裁判例

  東京地裁平成元年3月14日判決(判タ691号51頁)では、どのような場合に過剰診療になるかについて以下のようにしました。

   「医師の診療行為は、専門的な知識と経験に基づき、個々の患者の個体差を考慮しつつ、刻々と変化する病状に応じて行われるものであるから、特に臨床現場における医師の個別的判断を尊重し、医師に診療についての一定の裁量を認める必要があるというべきである。また、医療水準といっても一義的なものではなく、医学の進歩等に伴い、ある診療行為の有効性・妥当性については、見解の対立が存する場合があるのであって、その見解がいずれも医学界においてある程度共通の認識と理解を得られているものとして医療水準の範囲内にあるといえる限り、そのいずれを採用するかは医師の裁量に委ねられているというべきである。更に、交通事故による受傷や突発的な発作の発生等の緊急の事態においては、患者の症状を完全に把握するための種々の検査の実施あるいは可能な診療方法の選択についての十分な検討のための時間的余裕が与えられないままに、一応の病的状態を推測して迅速かつ適切な処置をとることを要請されることがあるのであるから、その後の臨床経過から事後的にみて、診療行為の中に必ずしも必要不可欠とはいえない部分が存在するとしても、診療当時の状況に照らし、医師の推測が根拠を欠き、不合理であるといえない限り、当該診療行為を不適切なものと断ずべきではない。思うに、医師にこのような裁量と主体性を認めないとすれば、自己への責任追及と負担を避けようとする余り、医師が消極的診療に終始し、医療の萎縮をもたらし、却って適正な診療を期待しえないこととなるおそれすらあるからである。
 したがって、医師の施した診療行為が必要適切なものであるか否かを審査するに当たっては、事後的にいかなる診療行為が必要であったかを客観的・一義的に判断し、それ以外の部分を不必要不適切であったとすべきではなく、診療当時のいわゆる臨床医学の実践における医療水準に照らし、診療当時の患者の具体的な状況に基づいて客観的に判断して、適応を有する病状も存在しないのにこれを存在するとして治療するなど当該治療行為が合理性を欠く診断に基づいてなされたものであるとき、あるいは当該治療ないし検査行為が、これを支持する見解が存在しないばかりでなく、独自の先進的療法としてもこれを肯認する余地もなく明らかに合理性を欠くときなど、当該診療行為が医師の有する裁量の範囲を超えたものと認められる場合に限り、必要適切なものとはいえない過剰な診療行為とすべきであると解するのが相当である。」(弁護士中村友彦) 

 

 

                                                                                                       

                                                                                                                                        

 

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