自動車損害賠償保障法3条の「他人」

 自動車損害賠償保障法3条は、交通事故を起こした加害者の損害賠償責任を定めていますが、請求できる主体が同条に定める「他人」でなければなりません。自動車損害賠償保障法3条の「他人」であるかについては、通常の場合、それほど争点になることがありませんが、交通事故の被害者が自賠責保険に請求を行ったときに、請求者が「他人」といえるかが問題になることがあります。

1 自動車損害賠償保障法3条

 自動車損害賠償保障法3条は、「自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責に任ずる。」と定めており、同条の「他人」とは『運行供用者及び運転者以外の者』をいいます(最高裁判所昭和47年5月30日判決民集26巻4号898頁)。ここの運転者には「運転補助者」も含まれます(自動車損害賠償保障法第2条4項)。

 運行供用者や運転者が他人から除外されているのは、交通事故を起こした主体なので、被害を受けていたとしても責任を追及できる立場にないからです。

2 運転補助者

 運転補助者とは、「運転者と一体となって運転者の運転行為に伴う危険を防止し、運転行為の一部を分担していたものということができるような場合」(金沢地方裁判所昭和50年11月20日判決交民8巻6号1667頁)や、「職務上運転を補助する立場にあって、現に運転補助作業に従事している者(あるいは運転補助作業から離脱していない者)であることとともに、その者の行為によって交通事故が発生したという補助行為と事故発生との因果関係がある場合」(大阪高等裁判所平成16年9月16日判決交民37巻5号1171頁)に該当するとされています。

 なお、実際に運転をせずに助手席で指示していた場合、具体的な事情によっては運転補助者ではなく「運転者」とされることがあります(最高裁判所昭和44年3月28日民集23巻3号680頁)。

3 配偶者等の親族

 交通事故で同乗して被害を受けた者が、配偶者や子供といった親族であったとしても、運行供用者・運転者に該当しなければ、自動車損害賠償保障法3条の「他人」とされます。

 最高裁判所昭和47年5月30日判決(民集26巻4号898)でも、「被害者が運行供用者の配偶者等であるからといって、そのことだけで、かかる被害者が右にいう他人に当らないと解すべき論拠はなく、具体的な事実関係のもとにおいて、かかる被害者が他人に当るかどうかを判断すべきである。」としています。

4 共同運行供用者が「他人」に当たることがあるか

 運行供用者は常に1人になるとは限りません。運行供用者とは、自己のために自動車を運行の用に供する者のことで、自動車について運行の支配を有しているかや、運行の利益が帰属しているかで判断されます。そのため、具体的な事情のもとでは、複数の運行供用者が出現することがあります。例えば、車の所有者(普段、車をたまに使用する)と車の使用者(同居の親族等で普段から車をよく使用している)が、同乗中に交通事故が起き、片方が怪我をしたような場合が挙げられます。

 共同運行供用者が存在する場合でも、共同運行供用者間の相互関係、運行支配の程度・態様等によっては、「他人」とされる余地があります。自賠責保険でも、自動車について複数の「運行供用者」が存在する場合、他の「運行供用者」との関係で運行の支配の程度が相対的に劣る人については、「他人」に該当するものとして取り扱われ、自賠責保険の適用対象となります。

 

(弁護士中村友彦)

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