近親者による損害賠償請求
交通事故にあった場合、事故の被害者が損害賠償ができるのは当然ですが、被害者の子や親などの近親者が損害賠償請求をすることもが考えられます。
1.被害者の相続人
傷害や後遺障害の場合、被害者本人ができますが、被害者が死亡しているとき、被害者自ら請求することはできませんので、被害者の相続人が請求することになります。
2.近親者
被害者の父母、配偶者や子供に、交通事故に被害者があったことにより、損害が発生したとして固有の損害賠償請求することが認められています。
(1)財産的損害
交通事故に被害者があったことにより、支出せざるをえなかったものや、会社を休んだことによる損害が、間接損害として認められることがあります。
- 立替払いをした被害者の治療費や通院交通費
被害者自身の損害として請求することもできますが、近親者の損害として請求できることもあります。
- 遠方にいる近親者が看護等のためにかけつけた場合の交通費等
京都地裁平成3年4月24日判決は、これを近親者固有の損害と認めました。
- 被害者に付添うために休業した場合
被害者が幼いことから、病院へ付添いをし、近親者が会社を休まざるをえなかったようなとき、休業損害が近親者自身の損害と認められることもあります(東京地裁平成22年2月12日判決)
- 被害者の事故を目撃し、精神疾患にかかったとして治療費等を請求
事故と因果関係ありとして認めた例もありますが(東京地裁平成19年12月17日判決)、否定されることが多いです。
(2)精神的損害
生命侵害の場合に、民法711条は近親者固有の慰謝料請求権を認めています。条文上、「父母」、「配偶者」「子」とされていますが、裁判例を見ると、祖父母や内縁の妻や兄弟姉妹にも慰謝料請求を認めるものが少なくありません。
また、生命侵害でなくとも、後遺障害が残り、被害者の近親者が「死亡にも比肩し得べき精神的苦痛」を受けた場合に、近親者固有の慰謝料請求権を認めています(最高裁昭和33年8月5日判決)。
(3)扶養利益の侵害
被害者が死亡した場合に、被害者から扶養を受けていた者は、被扶養利益を喪失したとして、損害の賠償をできます(最高裁平成12年9月7日判決)。被害者の損害賠償請求権の相続を放棄したり、そもそも相続人でない場合に、この損害の請求をするメリットがありますが、被害者の逸失利益の請求に比べるとかなり金額の面で少なくなります。