加害者の責任
加害者は次の3つの責任を負います。
1.刑事責任
交通事故が起こった場合、警察がやって来て、現場を確認して実況見分調書を作成したり、加害者や被害者などから事情を聴取して供述書を作成しますが、これは、(1)業務上過失致死傷罪、(2)危険運転致死傷罪、(3)道路交通法違反(過失建造物損壊、救護義務違反、酒酔い運転、酒気帯び運転、無免許運転)などの犯罪に該当する可能性があるからです。
警察は、捜査記録一式を検察官に送ります。これを送検と呼びます。そして、検察官は、捜査記録を検討し、場合によっては補充捜査を行い、裁判所に起訴するか否かを決めます。
重大な事故の場合は公判請求を行いますが、簡易な事故の場合には略式命令によることとなります。
起訴猶予、罰金刑、執行猶予が付く場合が大半ですが、事故の態様や被害の大きさなど最高20年の懲役刑(危険運転致死罪)になる可能性があり、軽く見れるものではありません。
2.行政責任
交通事故を起こすと、加害者は運転免許の取消し・停止などの行政処分を受けることがあります。公安委員会が一定の基準のもとで処分の決定を行います。
道路交通法違反事件の多くは交通反則通告制度という行政処分で処理されることが多いですが、この交通反則通告制度は、交通事故を伴う反則行為には適用されません。
3.民事の損害賠償責任
交通事故で人を死傷させた場合、加害者は被害者に対して民事上の損害賠償責任を負います。逆に言いますと、被害者は加害者に対して損害賠償請求を行うことができます。
交通事故に基づく損害賠償請求の場合、警察との関係、自賠責保険会社との関係、任意保険会社との関係、医療機関との関係、後遺障害が残る場合の後遺障害等級認定、過失相殺など通常の損害賠償請求事案より複雑になりがちであり、専門的知識が求められることになります。
加害者の民事責任は、他の責任と異なり被害者が主体的に動かなければ追及できません。
交通事故は一般に不法行為としての性格を備えるものですが、加害者の責任の根拠としては以下のようなものが考えられます。
- 民法709条の不法行為責任
不法行為一般に適用されるものです。
- 民法714条の責任無能力者の法定監督義務者の責任
未成年者が事故を起こした場合などで、親等に責任追及する場合です。
- 民法715条の使用者責任
加害者が仕事の遂行中に事故を起こした場合、加害者の使用者に対して責任追及するものです。
- 自動車損害賠償保障法3条の運行供用者責任
民法の特別法であり、人身損害のみに適用されます。
- その他 民法717条や718条など