遅延損害金5%
交通事故の損害賠償は、不法行為に基づく損害賠償であることから、損害賠償額全体(弁護士費用1割加算分を含む)について、遅延損害金が5%加算されます。
そして、遅延損害金の計算は、事故の日から損害が発生するとして、事故の日を基準にしてされます(最高裁昭和37年9月4日判決)。
1.弁護士費用損害金についても「事故の日」から計算
弁護士費用は、事件終了後に発生する部分が大きいので、弁護士費用損害金に対する遅延損害金の計算の基準日について争いがありましたが、最高裁は「事故の日」から計算するとし、他の損害と同様の扱いの判断をしました。
最高裁昭和58年9月6日判決(民集37巻7号901頁)
「右弁護士費用につき不法行為の加害者が負担すべき損害賠償債務も、当該不法行為の時に発生し、かつ、遅滞に陥るものと解するのが相当である。」
2.注意すべきこと
あくまで、不法行為に基づく損害賠償であるから、「事故の日」から起算されるのであり、自賠責保険に対する被害者請求(自賠法16条)の損害賠償額の支払債務については、「請求がなされた時」から計算されます。法律で認められた保険会社に対する直接請求権であり、損害賠償請求権とは別の請求権だからです。同様の理由で、政府保障事業に対する填補金請求も、「請求がなされた時」から計算されます。
- 自賠責16条による損害賠償請求権(最高裁昭和61年10月9日判決)
「自動車損害賠償保障法16条1項が被害者の保有者及び運転者に対する損害賠償請求権とは別に保険会社に対する損害賠償請求権を認めた法意に照らすと、同項に基づく保険会社の被害者に対する損害賠償支払債務は、期限の定めのない債務として発生し、民法412条3項により保険会社が被害者からの履行の請求を受けた時にはじめて遅滞に陥るものと解するのが相当である」
- 政府保障事業に対する填補金請求(最高裁平成17年6月2日判決)
「自賠法72条1項後段の規定による損害のてん補額の支払義務は、期限の定めのない債務として発生し、民法412条3項の規定により政府が被害者から履行の請求を受けた時から遅滞に陥るものと解するのが相当である」
3.充当の問題
受領した給付金が、損害賠償請求権の本体(元本)に充当されるのか、遅延損害金に充当されるのかが問題になります。
民法491条1項に従えば、特に当事者間で取決めがない場合、弁済による充当は、遅延損害金から充当されることになります。
しかし、被害者が受領する給付金は、加害者から給付されるものに限りません。自賠責保険、人身傷害補償保険、加害者が契約している任意保険会社等が治療費について医療機関へ直接支払った場合などがあり、これらのケースで法定充当の方法で行うべきか各給付の性質との関係で問題となっています。