葬儀費用
被害者の方が交通事故により亡くなれば、当然葬式を行う必要があり、葬儀費用などの費用がかかります。人間は必ず最終的には死にますので、その際に葬儀費支出を免れないために因果関係の点から損害に入るのかという問題もありますが、一定額は損害と認められています。
1.葬儀費用の額
葬儀費用は、原則として裁判基準では、150万円です(自賠責基準では60万円であることと比較すると2.5倍もの差があります)。但し、これを下回る場合は、実際に支出した額ですし、上回る場合は、立証すれば高い金額が認められることがあります。ですから、葬儀費用に関する領収書や振込明細書はキチンと保存しておくべきです。
なお、初7日や49日での読経料、回向料などの法要費は葬儀費用に含まれますし、仏壇購入費や墓地設置費用は、葬儀費用に含まれるか別途損害として認められることがあります。
2.香典
香典については損益相殺を行いませんが、その代わりに香典返しや弔問客接待費は損害に含まれません。
3.その他葬儀関係費
墓地建設や仏壇購入を別途の損害として認めた判例もありますし、遺体搬送料や遺体処置料も損害として認められることもあります。
4.葬儀費用を含めるとした最高裁判例(最高裁昭和43年10月3日判決)
最高裁昭和43年10月3日判決は、「遺族の負担した葬式費用は、それが特に不相当なものでないかぎり、人の死亡事故によって生じた必要的出費として、加害者側の賠償すべき損害と解するのが相当であり、人が早晩死亡すべきことをもつて、右賠償を免れる理由とすることはできない。」と述べ、葬儀費用は相当な額が損害になると認めています。
また、香典についても「会葬者等から贈られる香典等は、損害を補填すべき性質を有するものではないから、これを賠償額から控除すべき理由はない。」として、損益相殺の対象にならないことを明らかにしています。
5.150万円より高い葬儀関係費用が認められた裁判例
東京地裁平成20年8月26日判決(交民 41巻4号1015頁)では、「原告X1は,Bの葬儀等につき総額250万円を超える支出をし,また,原告X2及び原告X3も,Bの葬儀等につき40万円を超える支出をするとともに,墓地及び墓石の購入等につき400万円を超える支出をしたことが認められるところ,既に認定したBの身上や本件事故の態様等に照らし,Bの親族において墓地及び墓石の購入を含めたBの葬送等に関して十分に手厚く対応しようとしたことには無理からぬところがあることを考慮すると,賠償の対象として認められる範囲としては,250万円をもって相当というべきであり」として、その他葬儀関係費を含めていますが、150万円よりかなり高い額を認めています。