休業損害

交通事故にあった場合、傷害を負ったために治療をしなければいけないといった理由で会社や事業を休まざるをえないことがあります。その休まざるをえなくなったことによって、得られなかった利益も損害として加害者に請求できます。その損害を一般に「休業損害」といいます。

休業損害は、事故前の収入を基礎として、休業による現実の収入減が損害となりますので、被害者の事故前の基礎収入と休業期間を把握する必要があります。休業損害が認められるのは、治療経過にもよりますが、大体、怪我が治癒した時か症状固定の時までです。但し、後述しますが、治癒後にも休業損害が認められた例もあります。

1.給与所得者

事故前3ヶ月の平均支給額に休業期間をかけて計算します。だいたい、勤務先に休業損害証明書の作成に依頼し、休業損害証明書が用いられるのが通常です。なお、税金は控除しません。

休業により賞与の減額等があった場合は、それも損害になりうるので、そのことを裏付ける証拠を提出する必要があります。

2.事業者

原則として、税務申告によって所得を認定します。売上高から経費を控除した金額になります。確定申告の控えや納税証明書などで立証をします。

過少申告の場合など申告外の所得であっても、実際の収入額が証明できれば基礎収入となります。

3.失業者

原則として、休業損害は認められません。労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性があるものは認められますが、平均賃金を下回ることが多いです(名古屋平成14年6月7日判決)

4.専業主婦(主夫)

女性の平均賃金を用いて計算します。実際に家事に従事できなかった割合などを考慮して計算されます。

なお、一人暮らしの場合は、被害者が家事労働を普段行っていたとしても、あくまで自分のためにする労働であって休業損害は認められません。しかし、その場合に家政婦等を雇えば、その費用は損害と認められます。

5.学生

原則として認められませんが、収入があれば認められます。現実のアルバイトの収入などを基礎収入として計算されます。

事故による治療などで、就職時期が遅延したなどの事情がある場合は、就職すれば得られたはずの給与額が損害として認められます。

6.治癒後にも休業損害が認められた例

休業損害が認められる期間は、事故発生時から傷害の治癒、死亡日または症状固定日までの期間であり、それ以後については後遺障害逸失利益として把握されるの通常です。しかし東京地裁平成14年5月28日判決では、治癒後3ヶ月まで休業損害を認めるなど、治癒後にも休業損害が認められることもあります。

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