神経学的所見3

9.深部腱反射

深部腱反射とは、腱をゴムハンマーで叩き、筋に伸展刺激を与えたときに起こる筋収縮のことです。生理的な反射の代表的なものであり、運動系障害や末梢神経障害の診断の目安になります。この検査所見は、他覚所見として有力な神経学的所見とされます。

急な外力によって筋が損傷するのを防ぐための生理的反応であり、(1)筋紡錘(感覚器)⇒(2)神経(求心路)⇒(3)脊髄(中枢)⇒(4)神経(遠心路)⇒(5)刺激された筋と同一方向に働くすべての筋(効果器)というメカニズムで生じます。なお、(1)から(5)の流れを反射弓といいます。

正常であれば、上腕二頭筋は屈曲、腕橈骨筋では、前腕が屈曲、上腕三頭筋は伸展を示します。

(1)病的反射

「反射の亢進」と「反射の低下・消失」の二種類があります。

  • 反射の亢進か軽度亢進の場合⇒中枢神経性の麻痺
    大脳から脊髄の障害。反射中枢以上の錐体路(脊髄皮質路の上位運動ニューロン)の障害で、下位運動ニューーロンの抑制が解けて亢進

  • 反射の低下か消失の場合⇒末梢性の麻痺
    下位運動ニューロン、神経根、抹消神経、筋などの反射弓の障害で減弱・消失

(2)表示の仕方

著名な亢進 ++++
亢進 +++
軽度亢進 ++
正常
低下 ±
消失

(3)支配神経

下顎反射 三叉神経運動枝
上腕二頭筋反射 頚髄神経C5~C6
腕橈骨筋反射 頚髄神経C5~C6
上腕三頭筋反射 頚髄神経C7
膝蓋腱反射 腰髄神経L2~L4
アキレス腱反射 仙髄神経S1

以上以外にも、胸筋反射、腹筋反射、下位内転筋反射、膝屈筋反射などがあります。

10.バビンスキー反射

脊髄を反射弓とする脊髄反射の一つであり、錐体路障害を示すものとして有用です。正常では現れない病的反射であり、足の裏を尖ったもので踵から爪先にむけてゆっくりこすると、足の親指が足の甲の方にゆっくり曲がり、他の四本の指は外側に開く(背屈)するのが陽性で、脊髄中枢の著名な亢進と同じ意味です。

11.膝クローヌス

膝クローヌスは、検査者が患者の膝蓋骨をつかみ、これを急激に下に押し下げると膝蓋骨が上下に連続的に動く病的反射です。錐体路障害、脊髄中枢の障害が考えられ、腱反射の著名な亢進と同じ意味です。

12.足クローヌス

足クローヌスは、患者の膝を少し曲げた状態で、足関節を急激に背屈させると、足関節が連続的に屈伸するという病的反射です。錐体路障害、脊髄中枢の障害が考えられ、腱反射の著名な亢進と同じ意味です。

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