神経学的所見2
7.徒手筋力検査
筋力の低下をテストします。神経が障害を受けると、その神経が支配している筋の筋力が低下します。対象の筋を収縮させ、被検査者にはその状態を保持するよう指示し、検査者はその筋に伸張方向(または関節運動での逆方向)の徒手抵抗を加え、その際の筋の収縮保持能力によって、段階づけし、評価し判定します。
評価は以下の6段階です。正常が5です。
5 normal (正常) |
筋力100% | 強い抵抗を加えても打ち克って動き、運動域全体にわたって動かせる状態です。 |
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4 good | 筋力75% | いくらか抵抗を加えても打ち克って動き、運動域全体にわたって動かせる状態です。 |
3 fail | 筋力50% | 抵抗を加えなければ重力に打ち克って動き、運動域全体にわたって動かせる状態です。 |
2 poor | 筋力25% | 重力を除けば動き、重力に抗さなければ運動域全体にわたって動かせる状態です。 |
1 trace | 筋力10% | 筋の収縮がかすかに認められるだけで、関節運動は起こらない状態です。 |
0 zero | 筋力0% | 筋の収縮も全く認められない状態です。 |
神経障害部位によって筋力低下の部位が異なります。頸髄神経C5・C6なら三角筋や上腕二頭筋、頸髄神経C6・C7・C8なら上腕三頭筋や手関節伸展筋、頸髄神経C8・胸髄神経Th1なら小指外転筋などです。
なお、カルテや診断書で徒手筋力検査のことを「MMT」と記載することがあります。例えば、両上下肢でMMT4ぐらいなどです。MMT4レベルだと、通常は、杖による歩行、杖なしでの歩行は、ややぎこちなさが認められる程度の筋力です。
8 病的反射
脊髄の損傷を確認する神経学的検査です。
(1)トレムナー反射
中指を伸展させておいて、指先の腹をはじくと母指が内転します。その場合、診断書では+(陽性)と記載されます。何も生じなければ-(陰性)と記載されます。
(2)ホフマン反射
中指を挟んで指先を掌側に弾くと母指が内転します。その場合、診断書では+(陽性)と記載されます。何も生じなければ-(陰性)と記載されます。
(3)ワルデンブルグ兆候
さし指、中指、薬指、小指を屈曲させ、検査者と引っ張り合いをさせると母指が内転屈曲します。その場合、診断書では+(陽性)と記載されます。何も生じなければ-(陰性)と記載されます。
トレムナー反射、ホフマン反射、ワルデンブルグ兆候は、いずれも中枢性神経障害で出現する病的反射であり、脊髄障害や錘体路障害が疑われます。