ひき逃げや加害者が無保険の場合

ひき逃げされたり、加害者が自賠責保険に入っていなかったり、泥棒運転がされており車の所有者に運行供用者責任が発生しないような場合、被害者は保険会社から保険金を得ることはできません。

しかし、それでは、被害者がまったく救済されなくなってしまいます。このような、場合の救済措置として設けられたのが、政府補償事業制度です。

1.政府補償事業制度

自賠責制度を補完する各種の社会保険制度によっても救済されない被害者のために、最終的な救済制度です。自動車損害賠償補償事業ともいいます。

被害者が健康保険や労働災害保険その他社会保険制度で救済を受けることができる場合や加害者から損害賠償を受けた分については、政府補償事業制度では救済されません。請求できるのは、被害者だけで加害者による請求は認められていません。

政府補償事業の対象になるのは、だいたい次の3パターンです。

  • ひき逃げのケース
  • 自賠責保険の無保険者のケース
  • 泥棒運転で保有者に運行供用者責任が生じないケース

2.請求手続き

政府補償事業では、損害填補額の決定以外の業務は保険会社等に委託されており、損害保険会社等は請求の受理、損害額の調査及び支払いに関する業務を行うことができます。

したがって、政府補償事業への請求は、自賠法6条の保険会社ないし協同組合の窓口であればどこでもよいです。請求書が提出されますと保険会社から国に通知がいき、支払のための手続きがなされます。

給付金がおりるまでに1年以上かかることもあります。

3.自賠責保険と同じ点

  • 政府保障事業による填補金額の上限は、自賠責保険の保険金額と同様です。
  • 平成19年4月以降の交通事故からは、通常の過失相殺ではなく、重過失減額の運用がされています。
  • 自賠責保険における被害者請求権と同様に差押禁止債権です。
  • 時効期間は3年です。かつては2年ですが保険法の改正を踏まえて変わりました。

4.自賠責保険と異なる点

  • 政府保障事業に対する請求は被害者からのみ可能であって、加害者からは行えません。政府は、被害者に対して支払った後、加害者に対して求償します。
  • 健康保険や労災保険などの社会保険による給付がある場合は、その額が差引いて支払われ、自賠責保険と異なり慰謝料部分についても控除されます。
  • ひき逃げ車両や無保険車が複数台関わる事故であっても、填補金額の上限は1台分です。

5.損害額の調査

損害額の調査に関する業務は、損害保険会社等からの委託で損害保険料率算出機構が行っているため、資料の追加等の要請については、自賠責調査事務所から連絡がくることがあります。

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