交通事故紛争処理センター
交通事故紛争処理センターは、交通事故に関する紛争の適切な処理を行うことを目的として活動する財団法人です。全国十箇所に拠点があります。東京の本部の他、高等裁判所の所在地に7箇所の支部、さいたま市と金沢市の二箇所に相談室があります。裁判外紛争処理手続き(ADR)の一種です。
1.交通事故紛争処理センターの活動
自動車事故に関する損害賠償の紛争についての法律相談・和解の斡旋・審査を無料で行っています。その財源は、損害保険会社等の寄付金によるものです。
2.利用できる人
(1)交通事故の被害者(2)加害者本人(3)親族(4)委任を受けた弁護士に限定されています。
3.注意すべきこと
和解斡旋を利用するには、損害賠償額を算定できる状態である必要があり、つまり治癒か症状固定していることが必要であり、さらに後遺障害がある場合には、自賠責保険における後遺障害等級の認定結果が出た状態である必要があります。
独自に後遺障害等級認定を行わず、自賠責保険における後遺障害等級認定を尊重しているため、後遺障害等級認定に争いがある場合は、別の手続きを利用した方がよいです。
賠償額は、裁判基準が使用されますが、弁護士費用と遅延損害金はつきません。
交通事故紛争処理センターは、ADR法に基づく法務大臣の認証を受けていませんから、交通事故紛争処理センターに和解斡旋の申立をしても、時効は中断しません。
自動車以外の事故の損害賠償は取り扱っていません。
相手方が示談代行サービス付きの自動車保険に加入しておらず、紛争処理センターでの解決を望んでいない場合、あくまでもADRという性質上、取り扱うことができません。
人身傷害保険など、相談者が加入している保険会社との保険金に関する問題は取り扱っていません。
4.内部の体制
相談・和解の斡旋を取り扱うのは、すべて嘱託の弁護士です。また、審査を行う場合の審査会は、元裁判官・弁護士・学者が1名ずつ入った、3名の審査員で構成される合議制の機関です。中立・公平性のために、保険会社・共済組合の関係者は除外されています。
5.審査会の裁定
嘱託弁護士の和解の斡旋案に当事者のどちらかが同意しない場合、相談者は、審査を申立てることができます。審査会は、和解斡旋手続き中に明らかになった争点について、当事者双方から事情を聞いて裁定を行います。
相談者は、裁定の告知を受けた日から14日以内に同意するか回答する必要がありますが、相談者が同意した場合、保険会社は裁定を尊重しなければなりません(片面的拘束力)。
このような片面的拘束力があることから、保険会社は、審査会の審理が始まるまでは、紛争処理センターでの解決になじまないとして、訴訟移行の要請ができる場合があります。訴訟移行要請が出された場合、紛争処理センターの内部機関である訴訟移行審査委員会で訴訟移行すべきか判断されます。