交通事故と行政処分
交通事故を起こした場合には、民事上の責任や刑事上の責任に限られず、行政上の責任が発生することもあります。具体的には、交通事故を起こした運転者が公安委員会より運転免許の取消しや停止等の処分を受けることがあります。自動車の運転は、本来危険なものですから、運転免許を所持していても、一定の要件に該当すれば制限され、運転免許制度の内容は道路交通法に定められています。
1.運転免許の停止・取消し
道路交通法103条は、運転免許の取消し、停止等について定めており、免許を所持するものが、一定の要件を満たした場合に、免許の効力を停止または将来に向かって失わせるとしています。
(1)運転免許の停止
30日、60日、90日、120日、150日、180日の6段階の停止期間があります。免許の停止中に運転すると無免許運転になります。無免許運転は、刑事責任では、1年以下の懲役または30万円以下の罰金の可能性があります。
(2)運転免許の取消し
行政処分の回数や点数によって、免許を1年~10年の間、取得できなくなります。
2.交通反則通告制度
交通事故を伴う反則行為には適用されません。交通反則通告制度では、軽微で定型的な事件については、「反則金」の納付を通告し、これを一定期日内に納めた者は刑事訴追されないという制度です。なお、この制度によって、刑事訴追を逃れても、道路交通法違反により、点数が加算され、運転免許の停止・取消しという措置がとられます。
3.不服申立手続き
運転免許の停止や取消しなどの行政処分がなされて、不服がある場合、異議申し立てや、訴訟を提起することができます。
(1)不服申立て
処分があったことを知った日の翌日から60日以内に、書面で、公安委員会に対する異議申立てをすることができます。この異議申立てによる公安委員会の判断の結果に不満があるのであれば、訴訟を提起することもできます。
(2)行政訴訟
免許停止または取消処分の取消しの訴えを、裁判所に提起することができます。処分があったことを知った日の翌日から6か月経過したとき、処分の日の翌日から1年を経過したときは、取消訴訟を提起することができません。異議申立てをせずに、訴訟を提起することもできますが、異議申し立てをしたときは、異議申立に対する決定があったことを知った日の翌日から6か月の間または決定の日の翌日から1年の間は、取消処分等に対し出訴できます。