仮渡金・内払請求
交通事故に被害者があった場合、事故により怪我をしたなどがあれば、その治療費は損害として当然請求できます。しかし、損害賠償請求ができるとしても。現実に金銭が給付されるのには通常時間がかかります。そうであれば、被害者は、治療したくてもお金がなく病院へ行けないとなりかねません。
そこで、被害者の治療費等当面必要なお金を給付する制度があり、それが、「仮渡金」と「内払い」です。
1.仮渡金請求
運行供用者の損害賠償責任の有無について調査を要する場合や、治療継続でいつ治癒するか分からない場合など、賠償責任や賠償額が確定していない状況でも、被害者が治療費など当面の出費を余儀なくされることから設けられた制度です。被害者は、保険会社に対し、一定の金額を16条請求による損害賠償額の支払に先立つ仮渡金として請求することができます。
(1)請求できる金額
- 290万円
死亡した場合です。
- 40万円
以下のような傷害を負った場合です。
- 脊柱の骨折で、脊髄を損傷したと認められる症状を有するもの
- 上腕又は前腕の骨折で合併症を有するもの
- 大腿又は下腿の骨折
- 内臓の破裂で腹膜炎を併発したもの
- 14日以上の入院を要し、医師の治療を要する期間が30日以上のもの
- 20万円
以下のような傷害を負った場合です。2の場合より傷害の程度は軽いです。
- 脊柱の骨折
- 上腕又は前腕の骨折
- 内臓の破裂
- 入院することを要し、医師の治療を要する期間が30日以上のもの
- 14日以上の入院を必要とする傷害
- 5万円
11日以上、医師の治療を要する傷害で、2・3の傷害を除くもの
(2)最終的に確定した金額が、仮渡金を下回る場合
あくまで、仮渡金は損害賠償額の前渡しの性格を有することから、保険会社はその差額を被害者に対し、返還の請求をしてきます(自賠法17条3項)。なお、加害者が無責の場合、保険会社は政府の保障事業に対して補償を求めることができ、その場合、政府が被害者に対し、差額の返還請求をすることになります。
2.内払金
内払制度は自賠法上の制度ではなく、保険会社のサービスとして行われているものです。被害者は、傷害事故の場合に限り、損害賠償の額が確定する前であっても、傷害の保険金額120万円を上限として、10万円ずつ保険会社に対し請求することができます。その際、病院で診療報酬明細書を取って請求することになります。
なお、この内払金も仮渡金と同様、損害賠償の前渡しの性質を有する以上、確定された損害賠償の額から控除されます。