近親者固有の慰謝料

民法711条で「他人の生命を侵害した者は、被害者の父母、配偶者及び子に対しては、その財産権が侵害されなかった場合においても、損害の賠償をしなければならない」と規定されています。

ただし、夫が死亡し、妻と子供が相続し、妻と子供だけが加害者に対して損害賠償請求するような場合に妻と子供が近親者固有の慰謝料を請求しても、総額は変わりませんので、特段、近親者固有の慰謝料を請求する必要はありません。

これに対し、上記のケースで被害者の父母には相続権がありませんので、加害者に対して独自に損害賠償請求をするためには、近親者固有の慰謝料を請求する必要があります。

また、夫が死亡し、妻と夫の兄弟姉妹が相続した場合には、妻が3/4、兄弟姉妹が計1/4の法定相続分となります。損害賠償総額が1億円と仮定しますと、妻の相続額は7500万円、兄弟姉妹の相続額は2500万円となります。しかし、妻は、独自に民法711条により近親者固有の慰謝料を請求することもできるのです。

民法711条は「被害者の父母、配偶者及び子」に限定されていますが、判例では、これに該当しない近親者についても類推適用されています。

最高裁昭和49年12月17日判決は、不法行為により死亡した夫の妹であっても被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた等の事実関係があるときには同条の類推適用により加害者に対する慰謝料請求を認めているのです。

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