弁護士費用1割
訴訟を提起した場合、損害として認定された額の10%程度が弁護士費用の一部として認められています。これは、訴訟制度上の弁護士費用の敗訴者負担を認めたのではなく、弁護士費用相当額の損害が発生したと考えるものです。
ですので、示談が成立せず訴訟になったとしても、時間はかかりますが、遅延損害金(年5%)に加えて、弁護士費用として1割も加算されるので、賠償額は増えることになります。
1.加算方法
弁護士費用以外の損害を積算し、過失相殺などで減額した後、弁済金・自賠責保険からの支払等の損益相殺をし、加害者への請求可能金額を算出し、その約1割程度を弁護士費用の損害額として加算することになります。
- 弁護士費用以外の損害を積算
↓ - 過失相殺、素因減額など
↓ - 損益相殺
↓ - 1~3の処理で算出された額に約1割を加算
なお、認定された弁護士費用に対して再度過失相殺することはありません(最高裁昭49年4月5日判決、最高裁昭和52年10月20日判決)
2.注意すること
保険会社に対する保険金請求、保険会社からの求償訴訟などでは、弁護士費用1割の加算は認められません。弁護士費用1割加算は、あくまでも、不法行為の損害として認められるものであり、不法行為による被害者でない者の請求の場合は、通常認められないからです。
3.弁護士費用の加算を認めた判例(最高裁昭和44年2月27日判決)
「わが国の現行法は弁護士強制主義をとることなく、訴訟追行を本人が行なうか、弁護士を選任して行うかの選択の余地が当事者に残されているのみならず、弁護士費用は訴訟費用に含まれていないのであるが、現在の訴訟はますます専門化され技術化された訴訟追行を当事者に対して要求する以上、一般人が単独にて十分な訴訟活動を展開することはほとんど不可能に近いのである。従って、相手方の故意又は過失によって自己の権利を侵害された者が損害賠償義務者たる相手方から容易にその履行を受けないため、事故の権利擁護上、訴を提起することを余儀なくされた場合においては、一般人は弁護士に委任するにあらざれば、十分な訴訟活動をなし得ないのである。そして現在においては、このようなことが通常と認められるからには、訴訟追行を弁護士に委任した場合には、その弁護士費用は事案の難易、請求額、認容された額その他諸般の事情を斟酌して相当と認められる額の範囲内のものに限り、右不法行為と相当因果関係に立つ損害というべきである。」