一括払制度
任意保険会社が被害者に対して自賠責保険金と任意保険金の合計を支払い、その後、任意保険会社が自賠責保険会社に対して自賠責保険金を請求する方法のことを、「一括払制度」といいます。
この制度により、被害者は自賠責と任意保険会社へ二重に請求する手間が省け、法令の根拠はないが、損害保険業界のサービスとして行われているものです。
1.事前認定
一括払制度のもとでは、任意保険会社が自賠責保険分も含めて被害者に対し支払いをなすことになりますが、任意保険会社は、被害者に支払う前に自賠責保険会社から将来いくら支払われるのか知る必要があります。
そこで、事前に任意保険会社は、損害保険料率算出機構に対して、自賠責保険が有効に存在しているか、損害支払額が自賠責保険の支払対象になるか、後遺障害の等級認定等を事前に確認します。この確認する手続きのことを「事前認定」といいます。
自賠責損害調査事務所が、事前認定の結果を任意保険会社に通知し、被害者は任意保険会社からその結果の告知をうけることになります。
2.再認定依頼
任意保険会社は、自賠責損害調査事務所が事前認定した後遺障害等級や受傷との因果関係等に異議がある場合、自賠責保険会社対し、異議内容を書面にして再認定依頼を行ことができますし、被害者も異議がある場合は、任意保険会社に異議がある旨を伝えて再認定依頼を行うように求めることができます。しかし、実際には再認定依頼の手続きがされることはありません。
3.異議申し立て
事前認定に被害者が異議がある場合、通常、一括払いを解除して被害者請求に切り替えて異議申立てを行います。
保険会社等に対して、その判断が不当であるとして、異議申立書とそれを裏付ける資料を添付して提出します。損害保険料率算出機構の自賠責損害調査センターに設置された地区本部または本部の自賠責保険審査会(有無責等の専門部会、後遺障害の専門部会)で審査されます。
異議申立になされた判断に不満があれば、再度の異議申立も可能ですが、新たな立証資料がない限り、判断の変更はないでしょう。
4.一括払解除後に、被害者が自ら請求する場合
事前認定で、後遺障害等級の認定がされただけでは自賠責保険は支払われません。支払を受けるには、別途被害者請求の手続きをする必要があります。とはいえ、事前認定で判断がなされていることから、支払いはスムーズにいくことが多いです。
5.一括払いが行われない場合
任意保険の対人賠償が免責になる場合及び損害賠償額が明らかに自賠責保険の範囲内であるときは、一括払いは行われません。