交通事故で、重度の後遺障害が残存するような傷害を負うなどの事情で入院を余儀なくされた場合、交通事故の被害者がペットを飼育していたのであれば、家族等では世話ができず、やむなく業者に預けるといったことをする可能性があります。その際にかかった費用について交通事故の損害と認められるか争いになります。
1 大阪地裁平成20年9月8日判決(自保ジャーナル1781号13頁)
大阪地裁平成20年9月8日判決は、交通事故により、右下腿開放骨折等の傷害を負い、等級8級7号の右足関節機能障害、10級11号の右膝関節機能障害という併合7級の後遺障害を、これと9級15号の右足趾機能障害を併せて併合6級の後遺障害を、13級9号の右下肢短縮障害、12級5号の右腸骨採取による骨盤骨の変形、14級10号の右下肢痛としびれ感を併せて併合5級の後遺障害を負った事案です。被害者とその家族は、ミニチュアダックスフンドを飼っていました。
上記大阪地裁は、原告及びその家族は、交通事故により飼犬を業者に一定期間預けることを余儀なくされたということができ、原告の入院経過、家族構成、更に飼犬をどうするか検討を要したであろうことなどを考慮すると、128日という預かり期間は相当なものと認められるとし、預かり費用32万円は、交通事故による損害とみることが相当であるとしました。
2 横浜地裁平成6年6月6日判決(交民27巻3号744頁)
横浜地裁平成6年6月6日判決は、交通事故により、左大腿骨頸部内側骨折等の傷害を負い、左大腿骨頸部に偽関節が形成されたことによる運動障害および左下肢短縮による歩行障害の後遺障害を負った事案です。被害者は入院486日を要し、2匹の犬を飼っていたことから、原告の入院に伴い、鎌倉第二警察犬訓練所に預託し、その費用として合計132万3000円を支払ったことを認めたうえで、被害者は夫と生活を共にしていたものであるところ、夫が犬の世話をできた余地があるとして、約半分である65万円の限度で交通事故と相当因果関係のある損害と認めました。
(弁護士 中村友彦)