交通事故で傷害を負ったとき、病院に通院するなどして治療を受け、その治療費は交通事故による損害として賠償請求できます。しかし、診療行為に対する報酬額が、特段の理由がないにもかかわらず、社会一般の診療水準に比べて著しく高額な場合のことを高額診療といい、そのような場合、治療費の一部が交通事故による損害とは認められず、自己負担になってしまう可能性があります。
1 診療報酬単価
健康保険の場合、治療費の診療報酬単価は1点10円で計算されるのに対し、自由診療の場合、1点20円前後というのが多いです。
2 診療報酬単価が問題となった事案
交通事故の傷病の治療について、診療報酬単価が問題となった裁判例として神戸地裁平成4年3月27日判決(交民25巻2号443頁)があります。この神戸地裁判決は、交通事故の被害者を治療した医師が、被害者に資力がなく治療費を支払えないため、交通事故の加害者らに対し、被害者に代位して治療費の支払いを求めた事案です。
この神戸地裁判決では、現在ほとんどの診療報酬が健康保険法の診療報酬体系により算定されているが、その診療報酬体系は、一般の診療報酬算定の基準として合理性を有するものであるとしたうえで、自由診療において診療報酬についての合意を欠く場合であっても、1点10円が診療報酬額算定の基準となり、ただこれを修正すべき合理的事情が認められる場合には、事情に即した修正を加え、相当な診療報酬を決定するのが相当と解すべきであるとしました。そして、諸事情を考慮すれば、健康保険法の診療報酬体系の診療報酬基準の2,5倍に当たる1点単価金25円で算定した分をもって、交通事故と相当因果関係に立つ損害としての治療費と認めるのが相当であるとしています。
だいたい、裁判例としては、1点20円前後までを損害として認めている傾向があります。(弁護士中村友彦)