交通事故で傷害を負った時、病院等の医療機関で治療を受け、その治療費は交通事故による損害として認められますが、複数の医療機関で治療を受けた場合には、過剰診療、濃厚診療や高額診療の問題が生じてきます。濃厚診療とは、過剰診療と厳密に区分されるわけではありませんが、必要以上に丁寧に医療行為を行うことを言い、例えば、レントゲン等を撮る必要はあるが、通常より枚数を多く撮るようなケースです。
1 複数の病院に通院していて、一部の病院の治療費を損害として否定した事例
複数の病院に通院していて、一部の病院での治療費を交通事故による損害として否定した例として、大阪地裁平成5年8月20日(交民26巻4号1007頁)があります。
この事案では、交通事故で、頭部打撲・外傷性頸部症候群・耳鳴り等の傷害を負い、3か所の病院で治療していた期間について、「平成2年5月17日から同年9月30日までの治療はA病院、B病院の治療と重複していることから、本件事故との相当因果関係が認められず、被告が賠償すべき治療費は11万1284円に止まることになる。」として、一部の病院の治療費を交通事故による損害として認めませんでした。
2 セカンドオピニオンとして、交通事故の損害として肯定した事例
セカンドオピニオンのために、治療を受けている病院以外の病院に通院している場合に、セカンドオピニオンとしての病院の治療費を交通事故による損害として認めた例として、大阪地裁平成17年10月12日(交民38巻5号1406頁)があります。
この事案では、交通事故で、頸部・腰部捻挫の傷害を負っていたもので、「原告は、セカンドオピニオンを得るため、平成11年5月28日に A病院を一度受診したところ、その診療費用は3万4824円要したことが認められ、セカンドオピニオンとして2病院を受診する程度であれば相当性の範囲内と認められる。」としました。(弁護士中村友彦)