自転車を運転しながら、携帯を片手に操作をしている人を見ることがよくあります。しかし、自転車を運転しながら、携帯を操作することは、周囲や特に前方への注意が散漫になった結果、歩行者等に衝突して重大な交通事故につながりかねないだけでなく、その行為自体も罰金を科せられる可能性があります。
1 道路交通法違反70条
道路交通法70条では、「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」として、安全運転義務を定めています。そして、当該規定に違反した場合は、道路交通法119条1項9号・2項によって10万円以下の罰金の可能性があります。自転車を運転しながら、携帯を使用していた場合も、この安全運転義務に反しているのは明らかですから、道路交通法70条違反が問題になります。
2 道路交通法71条6号及び大阪府道路交通規則13条
道路交通法71条は、運転者の遵守事項を定めた規定ですが、同法6号では、「前各号に掲げるもののほか、道路又は交通の状況により、公安委員会が道路における危険を防止し、その他交通の安全を図るため必要と認めて定めた事項」を遵守しなければならないとされています。そして、大阪府公安委員会が定めた大阪府道路交通規則13条では、
「携帯電話用装置を手で保持して通話し、又は画像表示用装置を手で保持してこれに表示された画像を注視しながら自転車を運転しないこと。」を遵守事項として定めています。ですので、携帯電話を使用しながら運転した場合、道路交通法71条6号違反として、道路交通法120条1項9号により、5万円以下の罰金の可能性があります。
なお、上記では大阪府公安委員会が定めた道路交通規則をあげましたが、条文の違いはあっても、他の都道府県でも同じような規定があります。
3 交通事故を起こした場合の過失
携帯電話を操作しながら運転中に、交通事故にあった場合、当該事情は交通事故の過失割合を決める際に考慮されるべき事情です。別冊判例タイムズ38号「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準 全訂5版」p133では、事故態様ごとに通常想定されている程度を超えるような過失、著しい過失の例として、携帯電話等の無線通話装置を通話のため使用したり、画像を注視したりしながら運転することが挙げられています。そして事案にもよるとは思いますが、10%程度が基本過失割合の修正要素とされています。
(弁護士中村友彦)