原則として自転車は車道を走行しなければならないですが、例外的に歩道を通行できます(現実には、自転車の歩道の通行許可の規制がなされていなくても、自転車は当たり前のように歩道を走っていますが)。自転車が歩道を走行中に、歩行者と衝突する等で交通事故が生じて、相談に来られる方が多いです。自転車は保険に未加入の人が多いですし、保険に入っていても示談代行がなく、加害者本人と交渉しないといけないことや、保険会社から歩行者に重大な過失があると言われたことなどで、紛争になることがあります。
1 自転車は、歩行者にとって凶器
自転車の交通事故であると軽く見ている人がいますが、事故態様・被害者(高齢者や幼児等)によっては甚大な被害が出ることがありますので、決して軽く見てはいけません。大阪地裁平成10年6月16日判決(交民31巻3号866頁)でも、「一般に、歩行者にとって、走行中の自転車はかなりの凶器となりうるものであるから、自転車を運転するものは、進路前方や周囲の歩行者に対し、十分な注意を払うべきである」とされています。
2 過失割合
自転車は、歩道上を通行できるのはあくまで例外であることや、歩道を通行できる場合に自転車は歩道の車道寄りを徐行する義務・歩行者の通行を妨げる場合には一時停止する義務がありますので、原則として、歩道上で生じた自転車と歩行者の交通事故における歩行者の過失割合は0となります。
別冊判例タイムズ38号『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』p185では、歩行者の基本過失割合0としたうえで、歩行者の過失割合の加算修正要素として急な飛び出しを5%としています。歩行者は、原則として歩道上で自転車に対して注意義務を負っておらず、自転車が歩道を通行できる場合には、歩行者がわずかに注意すれば事故を回避できたのであれば、若干の過失相殺を行うということです。
3 普通自転車通行指定部分で交通事故が生じた場合
歩道上に普通自転車通行指定部分があり、当該部分で自転車と歩行者の事故が生じることがあります。この場合、保険会社が歩行者の過失を50%である旨を主張してくることがありますが、別冊判例タイムズ38号『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』では、「普通自転車通行指定部分で事故が発生したことのみを理由に歩行者に加算修正するのは相当ではない」としていますので、気を付けてください。普通自転車通行指定部分も決局は歩道であって、自転車が注意しないといけないということです。
(弁護士中村友彦)