最近(平成27年4月2日現在)、ニュース等で兵庫県の自転車保険等に加入する義務を定めた条例が平成27年4月1日から施行されたことが話題になっています。自転車同士の事故や、自転車対歩行者の事故自体は昔から沢山あったのでしょうが、たかが自転車という意識があったためか、あまり今まで問題になってこなかったと思われます。しかし、最近は、損害自体は自動車の交通事故と同じであるということを知識として持つ人が増えたためか分かりませんが、自転車が関わる交通事故の争いの相談を受けることが多いです。
相手方が保険に未加入であったため、損害賠償金の回収に苦労することもありますので、自転車の事故がカバーされる損害保険に加入する流れは個人的に良いと思います。
1 努力義務を定めた条例
今までにも、自転車保険に加入すること推奨する条例は、以下のように4都道府県でありました。しかし、その内容は努力義務であったうえ、一般の人には全くと言っていいほど認知されていませんでした。なお、4都道府県以外でも、市単位の条例で定められているものもあります。
(1)京都府
京都府自転車の安全な利用の促進に関する条例の第3条3項では「自転車を利用する者は、その利用する自転車に関する交通事故により生じた損害を賠償するための保険又は共済(以下「自転車損害保険等」という。)に加入するよう努めなければならない」と規定されていました。
(2)埼玉県
埼玉県自転車の安全な利用の促進に関する条例の第4条2項では、「自転車利用者は、自転車が関係する交通事故の防止に関する知識の習得及び自転車が関係する交通事故により生じた損害を賠償するための保険又は共済(第11条第2項及び第12条において「自転車損害保険等」という。)への加入に努めなければならない。」と規定されていました。
(3)愛媛県
愛媛県自転車の安全な利用の促進に関する条例の第5条2項では、「自転車を利用する者は、自転車が関係する交通事故の防止に関する知識の習得及び自転車が関係する交通事故により生じた損害を賠償するための保険又は共済(以下「自転車損害保険等」という。)への加入に努めなければならない。」と規定されていました。
(4)東京都
東京都自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例の第27条1項では、「自転車利用者は、自転車の利用によって生じた他人の生命、身体又は財産の損害を賠償することができるよう、当該損害を填補するための保険又は共済(次条において「自転車損害賠償保険等」という。)への加入その他必要な措置を講じるよう努めなければならない。」と規定されていました。
2 兵庫県の加入義務を定めた条例
兵庫県が定めた自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例は、上記の都道府県の条例とは異なって、「加入しなければならない」となっており、努力義務ではないところに特色があります。ただし、加入しなかった場合の罰則は設けられていません。また、13条2項で「保護者は、その監護する未成年者が自転車を利用するときは、当該利用に係る自転車損害賠償保険等に加入しなければならない」としており、特に保護者の責任に注意した規定を設けています。
自転車保険は損害保険会社が色々なタイプの保険を売りに出していますし、火災保険・傷害保険・自動車保険等に個人賠償責任特約を附帯する方法もありますから、まだ加入されていない方は入っておくべきです。当事務所が扱っている事案(自転車事故)で、加害者が保険に加入している割合は半分程度ですが、保険に加入されていない加害者を見るに、自分が加害者になったときのために保険の大事さを痛感させられます。
(弁護士中村友彦)