交通事故の加害者の車の所有者の調査

 交通事故にあった際、加害車両を運転していた運転手に対して、不法行為責任に基づいて損害賠償請求を行うことが可能ですが、損害賠償請求をできる相手はそれだけに限られません。人身損害の場合には、加害車両の所有者に対しても損害賠償請求できる場合があります。しかし、交通事故証明書には、加害車両の運転手の住所・氏名等しか記載されておらず、加害車両の所有者が分からず、調査を要する場合もあります。

1 運行供用者責任

 自動車損害賠償保障法3条では、自己のために自動車を運行の用に供する者は、その運行によって他人の生命又は身体を害したときは、これによって生じた損害を賠償する責任があると定めています。そして、自己のために自動車を運行の用に供する者を、『運行供用者』といい、自動車の所有者もこれに含まれる(もちろん例外はあります)とされています。

 したがって、自動車損害賠償保障法3条により、交通事故の加害車両の所有者も「運行供用者」として損害賠償責任(人的損害)を負う場合がありますので、被害者としては自動車の所有者も調べる必要があります。通常の場合、加害者側の保険会社が示談代行を行っている場合には、あまり加害車両の所有者が誰であるかは気にされないですが、加害者側が任意保険に未加入の場合には、大きな意味を持ってきます。

2 所有者の調査

 交通事故の加害者両の所有者の確認方法は、車両の種類によって異なります。なお、以下では、加害者側や任意保険会社が任意に開示してもらえないときを想定しています。

(1)自動車(総排気量250㏄を超える二輪自動車、軽自動車及び小型特殊自動車を除く。)

 弁護士法23条照会により、運輸支局に対して交通事故時の自動車の登録事項の照会をすれば、登録事項等証明書の写しを入手できます。登録事項等証明書の申請は、車台番号の記載が不可欠ですので、第三者は弁護士法23条照会に頼らざるをえません。

(2)総排気量が250㏄を超える二輪自動車

 運輸支局に対し、弁護士法23条照会を行う必要があります。

(3)軽自動車

 軽自動車検査協会に対し、弁護士法23条照会を行う必要があります。

(4)総排気量125㏄を超え250㏄以下の二輪自動車

 運輸支局に対し、弁護士法23条照会を行う必要があります。

(5)総排気量125㏄以下の二輪自動車、原動機付自転車及び小型特殊自動車

 市町村に対して、弁護士法23条照会を行う必要がありますが、回答を拒絶されることがあります。

(弁護士中村友彦)

 

 

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