交通事故の際に、顔面部に強い打撲などがあった後、瞳が大きくなったままの状態になってしまい、外傷性散瞳になることがあります。ものがまぶしく見えるようになり、時間の経過とともによくなっていくこともありますが、後遺障害として残存してしまうことがあります。自賠責保険では、外傷性散瞳が後遺障害として残存してしまった場合、相当等級として後遺障害の等級認定がされることがあります。
1 自賠責後遺障害等級一覧
自賠責保険では、交通事故による外傷性散瞳の後遺障害について、以下のように定めています。散瞳とは、瞳孔が大きくなって対光反応が消失又は減弱するものをいいます。羞明とは俗にいうまぶしいということです。瞳孔の直径を測定し、対光反射の程度をみます。
等級 |
後遺障害の内容 |
第11級相当 |
両眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの |
第12級相当 |
1眼の瞳孔の対光反射が著しく障害され、著名な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの |
第12級相当 |
両眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの |
第14級相当 |
1眼の瞳孔の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの |
光が瞳に当たると瞳が縮む反応を「対光反応」といい、電子瞳孔計という検査機械で右眼、あるいは左眼に直接光を当てて反応を見る検査を「直接反射」といい、右眼あるいは左眼に光を当てて反対の眼の反応を見る検査を「間接反射」といいます。この検査は嘘をつくことができない眼の反射検査なので客観的なデータを測定することが可能です。反応が悪いと、まぶしさを強く感じることになります。外傷性散瞳の場合、瞳孔が拡大したままか、瞳孔収縮率が低くなります。
2 外傷性散瞳以外に目の障害がある場合
交通事故で顔面部を強打した場合、外傷性散瞳以外に視力が低下したりといったことがあります。このような外傷性散瞳と視力障害または調節機能障害が存する場合は、併合の方法を用いて相当等級を定めるとされています。
なお、当然のことですが、外傷性散瞳の存在自体から顔面部に相当程度外力が加わったことが分かりますが、外傷性散瞳の存在が他の目の障害を裏付けることにはなりません。東京地方裁判所平成23年5月27日判決(平成21年(行ウ)148号、自転車で通勤中に負傷した労災事故)では、外傷性散瞳は認めていますが、調節機能障害についてはその存在を裏付けるものがないとして併合等級の認定を否定しました。
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(弁護士中村友彦)