交通事故の被害者は、交通事故で傷害を負った場合、その治療のために通院にかかった交通費を損害賠償として請求できます。しかし、通院のため以外の交通費であっても、通勤・通学・日常生活の必要な買い物の際に、身体の不自由や安全確保のためにタクシーを使用した場合なども、相当性のある交通事故による損害として賠償請求できることがあります。
1 通勤のための交通費
大阪地裁平成20年6月26日判決(交民41巻3号781頁)では、勤務先への事情説明のためにタクシーを使用し、さらにギプス装着のためにタクシーで通勤したケースについて、そのタクシー代合計額13,870円は交通事故による損害と認めました。
2 遺体の確認及び引取りのための交通費
神戸地裁平成12年11月16日判決(交民33巻6号1878頁)では、交通事故により死亡した被害者の遺族の交通費について、遺体の確認及びその引取り等の理由により、遺族において自宅と交通事故地とを往復する交通費は交通事故と相当因果関係がある損害と認めました。但し、その他の被害者に対する情愛に基づき支出されたものや警察の事情聴取に協力するためのもの等は、交通事故との相当因果関係を認めませんでした。
3 交通事故と関係ない通院のための交通費
大阪地裁平成20年3月14日判決(交民41巻2号327頁)では、通勤や、交通事故による傷害自体の治療ではない歯科への通院についても、交通事故がなければ通勤や歯科への通院にタクシーを利用する必要性はなかったことから、相当因果関係があるとして損害と認めました。
4 通学のための交通費
交通事故により、膝下切断になったため、通学のために乗用車使用を認め、学校近くの駐車場使用料を損害として認めた事案があります(浦和地裁昭和60年3月13日判決判時1157号139頁)
(弁護士 中村 友彦)