交通事故にあって自動車が損傷した場合、事故にあった車両を修理のために修理業者などに預けておくことがあります。通常の場合、修理業者に修理のために預けていたとしても、修理費用とは別に保管料がかかるようなことはありません。しかし、修理することが中々決まらずに長期間経過してしまったりした場合には、修理業者から保管料を請求されることはあります。
また、保険会社が保険金を支払うかについて態度をはっきりとさせないまま、時間がかかり駐車場等に保管することで保管料がかかることもあります。このような場合に、交通事故による損害として認められるかで争いになることがあります。
1 必要かつ相当な範囲に限定
裁判例では保管料が全く認められないわけではありませんが、無制限に認められているわけではありません。保管料が交通事故による損害と認められたとしても、保管期間は必要な範囲であり、保管料の金額は相当な範囲に制限されています。
2 裁判例
(1) 大阪地方裁判所平成10年2月20日判決(交民31巻1号243頁)
大阪地方裁判所平成10年2月20日判決は、交通事故で車両を損傷し、1年3ヶ月程修理業者に保管してもらい、保管料として45万5000円を請求した事案です。
上記大阪地裁は、「事故と相当因果関係がある保管料として認められる範囲は、特段の事情のない限り、原告車につき、これを廃車にするか否かを考慮するのに必要な相当の期間内のものに限られるというべきであり、原告とつき合いのあるAが、原告車につき、一見して修理不能である旨の文書を作成していることに照らせば、原告車は原告が父親から譲り受けたものであることを勘案しても、概ね2週間程度で右判断は可能というべきであり、本件事故との間に相当因果関係のある保管料については1万7500円をもって相当と解する。」として、保管料の損害項目は認めましたが、金額は大きく制限しました。
(2) 東京地方裁判所平成24年11月30日判決(交民45巻6号1416頁)
東京地方裁判所平成24年11月30日判決は、交通事故により被害者が死亡し、警察の捜査や保険会社の査定等のために、事故車両を保管していたために、保管料として6万3375円を請求された事案です。
上記東京地裁は、「被告らが、本件訴訟係属中の同年12月2日、保管されている原告車を確認しに行き、原告車の損傷状況を撮影した写真(乙5の1)を本件訴訟に提出していることからも、原告車の損傷状況を保存するために原告車を保管する必要があったことが認められるから、少なくとも同日までの保管料12万7500円(原告が損害として主張しているのは,その一部である。)については、本件事故と相当因果関係が認め られる。」として請求額を全部認容しました。
(弁護士中村友彦)