交通事故は、自分の車両を運転している最中に起きることが多いでしょうが、事案によっては他人の車を運転している最中に起きることもあります。レンタカーを借りている場合、通常、保険の適用がありますが(但し、免責額や条件等に違いはあります)、その場合でも、交通事故が起きた際には借主が負担しなければならないものがあります。レンタカー会社の営業補償の意味合いのある、ノンオペレーションチャージによる負担などがその例です。このような負担も交通事故による損害として請求できる可能性があります。
1 ノンオペレーションチャージ(NOC)
営業補償の一部として、損害の程度や修理期間に関わらず、借主が負担させられるものです。予定返却店舗に自走して返却できる場合には2万円、自走して返却不可能な場合には5万円とされていることが多いと思います(但し、事故の内容などで別の扱いがされていることがあります)。レンタカー会社は修理のために一定期間事故車両を使用しての営業ができなくなるため、その営業補償するというものです。
レンタカー会社によっては、レンタル契約時に、1日当たり一定額(数百円)を追加で払うことで、万一ノンオペレーションチャージが発生しても免除される特約をつけることができる場合もあります。
2 加害者へ損害賠償請求
交通事故がなければ、レンタカーを借りていた被害者はノンオペレーションチャージで負担が必要となることはなかったのですから、被害者が負担した金額は交通事故による損害として請求できる可能性があります。
(1) 大阪地方裁判所平成12年10月4日判決(交民33巻5号1608頁)
大阪地方裁判所平成12年10月4日判決は、レンタカーで移動中に交通事故にあい、レンタル契約に従って被害者が支出したノンオペレーションチャージで負担した金額等の請求がされた事案です。上記大阪地裁は、「原告は、本件事故のため、レンタカー会社に対し、レンタル契約の規定に従い、7万円と消費税3500円を支払った。内訳は、ノン・オペレーション・チャージとして、予定の営業所に返還された場合の2万円、車両保険免責額5万円、消費税3500円である。」として、交通事故の被害者の請求を損害としてそのまま認めています。
なお、自分の加入する保険に他車運転危険特約がついている場合には、その特約が使用できないかどうか、使用できたとしてメリットの方が多いかについて一度確認されることをおすすめします。場合によっては、ノンオペレーションチャージについて、自分の保険で対応できるかもしれません。
(弁護士中村友彦)