ここで挙げる公園内の道(園道)は、自動車やバイクが走行することは認められておらず、専ら歩行者や自転車が走行する道路のことです。園道は、自転車の走行を認め、路面に自転車用の印を付けていたりする場合があり、このような場合に歩行者と自転車で交通事故が生じた際、園道の性質などで過失割合が争いになることがあります。
園道は歩道として扱われ、歩道上の交通事故と同様に過失割合を考えるべきであると思いますが、保険会社によっては道路交通法上の歩道ではないとして、過失割合を大きく争ってくることがあります。
1 園道の性質
(1) 道路交通法の道路の該当性
「道路」とは、道路交通法2条1項1号によれば「道路法第2条第1項に規定する道路、道路運送法第2条第8項に規定する自動車道及び一般交通の用に供するその他の場所」のことで、たとえ私有地であっても、不特定の人や車が自由に通行できる状態となっている場所は道路交通法上の道路であるとされています(最高裁判所昭和44年7月11日判決判時562号80頁)。そのため、駐車場や公園内の通路などであっても「一般交通の用」に客観的に使用されていれば、道路交通法上の「道路」に該当することになります(『自転車事故の法律相談』学陽書房発行p14)。
園道は、一般公衆の用に日常的に使用されている(ウォーキングなど)ことが多いでしょうから、通常の場合、道路交通法上の道路に該当します。
(2) 歩道
道路交通法2条1項2号によれば、歩道とは「歩行者の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によって区画された道路の部分」のことです。通常の場合、縁石等で車道とは区画が分かれていますから、園道は道路交通法上の歩道に該当することになります。
2 歩道上の過失割合
自転車は車両ですから、歩道を走行するのは例外です。歩道を走行できたとしても、歩行者の通行の妨げにならないようにする必要があります。『別冊判例タイムズ38号』p184では、歩行者は、歩道上で自転車に対して注意を払う義務を負っていないと解され、歩道上で事故が発生した場合には、原則として、歩行者は過失相殺されることはないとしています。そのため、基本的に歩道上で生じた交通事故で、歩行者に相殺される過失はありません。歩行者が自転車の前に急に飛び出したりした場合などに若干過失が認められるにとどまります。
3 園道の路面上に自転車走行のマーク等がある場合
道路交通法10条3項では、歩行者は普通自転車通行指定部分をできるだけ避けて通行するように努めないといけないとされています。しかし、自転車は、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で走行することが求められていることから、歩道の路面上の普通自転車通行指定部分で事故が発生したとしても、歩行者に過失の加算修正するのは相当ではないと考えられていますので(『別冊判例タイムズ№38号』p184)、通常の歩道上の交通事故と同様に扱うべきです。ただ、保険会社はこの自転車走行のマークがある部分で事故が生じた場合に、歩行者側に大きな過失割合を主張してくることがあります。
4 歩行者側に過失が認められる場合
一般的に歩行者が自転車の前に急に飛び出した場合です。それでも過失相殺としては5%程度です。
自転車事故は、自転車の損害賠償責任保険の加入が義務化されつつある流れであり、注目されてきています。損害賠償で、保険会社とやり取りすることがあると思いますが、過失割合等で安易な示談をしてはいけません。
弊所が扱った案件でも、園道上の事故で、弊所が入る前には歩行者の過失を主張していたにもかかわらず、弊所が示談交渉に入った後はあっさり0対100で示談が成立したものがあります。また、何故か過失割合を5対5であると主張して聞き入れてくれず、やむなく訴訟提起し、歩道上の事故として解決したものもあります。早めに専門家に相談されることをお勧めします。
(弁護士中村友彦)