交通事故で事故の責任の有無について争いがあるなどの場合、加害者が自分の加入している保険会社に連絡しない結果、加害者加入の任意保険会社が一切登場せず、被害者には、加害者がどこの保険会社の保険に加入しているのかが分かりません。
加害者に訴訟で損害賠償請求をしても、あくまでも自己の責任を否定し、判決が出ても対応せず、差し押さえる財産も不明な場合には、交通事故の被害者は困ったことになります。これが、加害者加入の保険会社が判明しておれば、通常、対人賠償・対物賠償の任意保険では、被害者の直接請求についての約款の規定がありますので、加害者が如何に自己の責任を否定していても、判決を取得すれば回収できる可能性が高いです。
1 自賠責保険の場合
自転車安全運転センターの発行している交通事故証明書をみれば、各当事者の自賠責保険会社及び証明書番号が記載されているのが通常ですので、これを見れば、人身損害だけですが、自賠責保険に被害者請求すれば、ある程度回収することが可能です。
ただし、自賠責保険についても、交通事故後の警察の事情聴取の際に、自賠責保険の保険証を警察が確認していなければ、交通事故証明書に自賠責保険の情報は載りません(車検証と一緒に自賠責保険証を自動車にのせていることが多いので、あまりこのことが問題になることはないですが、バイクでは偶にあります)。
交通事故証明書に自賠責保険の情報が記載されていない場合には、加害者自身から教えてもらうしかないですが、通常教えてくれませんので、任意保険と同様、どこに請求したらよいのか分からないという問題が生じます。この問題に対しては、次の任意保険と同様の方法をとることが考えられます。
2 任意保険の場合
各保険会社に対して、弁護士会を通して23条照会を行うという方法があります。23条照会とは、弁護士法第23条の2に基づいて、弁護士会が官公庁や企業などの団体に対して必要事項を調査・照会する制度です。ただ、この23条照会をたくさんある保険会社1社ずつしていると時間・費用・労力がかかりますので、個別に保険会社に23条照会を行うとしても、ある程度保険会社の目途が付いていて、早期で動きたい場合のみだと思います。
損害保険の場合、一般社団法人日本損害保険協会、一般社団法人日本少額短期保険協会や、一般社団法人日本共済協会などに対して、23条照会を行えば、これらの協会が協会加盟の各保険会社(一般社団法人日本損害保険協会については、平成29年8月17日時点で17社)に照会して回答を受けることができます。加害者加入の任意保険や自賠責保険が全く分からない場合は、この方法をとることができます。
(弁護士中村友彦)