交通事故にあった場合、交通事故証明書が発行されます。これは物件事故と人身事故の2種類があり、人身事故の交通事故証明書は診断書を警察に提出して人身事故に切り替えをすることで発行されます。この人身事故の交通事故証明書は、交通事故の発生を証明するものであり、自賠責保険の手続きにあたって提出を求められるものです。しかし、交通事故の当事者の事情によっては、人身事故に切り替えることで免許に影響があるなどの場合があり、人身事故への切り替えを躊躇することがあります。
人身事故への切り替えを行わない場合、交通事故証明書は、物件事故の証明書しか発行されませんので、自賠責保険の手続きにあたっては、人身事故の交通事故証明書の代わりに人身事故証明書入手不能理由書を提出することが求められます。人身事故証明書入手不能理由書は、原則として、事故の相手方等(自分側の当事者以外)に作成してもらう必要がありますが、感情的な対立があるなどの場合、事故の相手方等から取得することができないことがあります。
1 人身事故証明書入手不能理由書
人身事故に切り替えると都合が悪い事情があり、物件事故の事故証明書しか発行されない場合に自賠責保険に提出する書類です。賠償を受ける側が、相手方加入の自賠責保険に対して直接請求(16条請求)する場合には、相手方や目撃者に記載してもらう必要が原則的にあります。賠償をした側が、自分側の自賠責保険に対して請求する場合には、相手方や目撃者に記載してもらう必要が原則的にあります。
2 人身事故証明書入手不能理由書を事故の相手方等から取得できない場合
感情的な対立があり、相手方が人身事故証明書入手不能理由書の作成に全く協力してくれないといったことがあります。このような場合、自賠責保険の手続きをしたくても、必要書類が足りなくて困るといった事態が生じることになります。
では、相手方の協力等が望めないといった場合に自賠責保険の手続きができないかというと、そういうわけではなく、自分側の当事者のみで人身事故証明書入手不能理由書を作成して提出しても、自賠責保険の手続きを進めることができます。ただ、手続きを進めることはできますが、当方から自賠責保険に請求していることについて相手方へ通知がされ、相手方が自賠責保険の適用を認めないとした場合には手続きが止まってしまう可能性はあります。
人身事故に切り替えなくても交通事故の賠償に関する手続き自体は可能ですが、できる限り、人身事故に切り替えることを勧めます。人身事故に切り替えた場合、事故態様の資料として実況見分調書といった刑事記録が入手可能になり、事故態様が分かりやすくなります。
(弁護士中村友彦)