外傷性頸部症候群とは、何らかの外傷により頸椎周囲の支持組織(靭帯や椎間板等)のみならず神経系や内耳機能などが障害され、精神神経的異常も伴いうる多彩な症状がでる症候群のことです。いわゆる、むち打ち症やむち打ち損傷のことですが、必ずしも「むち」のように頸椎がしならなくても症状が出現することや、その呼び方から種々の誤解を招く可能性があることから、現在臨床的には使用されていません。交通事故にあった場合、よく外傷性頸部症候群(むち打ち症)について、争われることが多いです。
1 むち打ち症の症状
主な症状は、頸部痛や頭痛ですが、それ以外にも、下記のような多様な症状が出現し、時間の経過で変化していくこともあります。
①頭、顔面のしびれ
②後頭部、背部や上肢の痛み、こり、しびれ
③眼症状
④耳鳴り、聴力低下
⑤筋力低下、知覚障害、可動域制限
⑥めまい
⑦嘔吐、倦怠感、集中力・記憶力の低下
⑧精神障害
2 痛みやこり等の出現
こりや痺れを訴えても、特定の神経根の支配領域に一致しないことが多く、外傷直後になくても、数時間後や数日後に出現してくることも多いと言われます。痛みの原因について、椎間関節の靭帯損傷、関節包損傷等の器質的損傷が発生しているという考え方からは、痛みは交通事故直後に生じるはずだとされ、現実に生じている痛みが、交通事故によるものかが争われることがあります。交通事故による受傷後、しばらく経ってからの痛みが出ることの理由について、緒説ありますが、いまだ医学的に解明されているとは言えない状態です。(弁護士中村友彦)
3 関連コラム
②むち打ち症における労働能力喪失期間の制限(交通事故による後遺障害の損害)