自転車同士による交通事故の場合でも、路面に投げだされるなどして、骨折等の大怪我を負うことがあります。自転車事故で負った怪我を治すために、継続的に治療を行うなどしますが、相当期間の治療の結果、結局、治療しても意味がない状態になり、後遺障害が残存する場合があります。
加害者側が自動車やバイクの場合に自賠責保険を通じた後遺障害認定がありますが、自転車が加害者となる自転車事故の場合には、後遺障害の認定の仕方で争いが生じることがあります。以下、全ての事案で使えるものではないですが、方法を挙げていきたいと思います。
1 自賠責損害調査事務所による後遺障害認定サポートの利用
加害者が自動車やバイクの場合には、自賠責保険が利用できますので、自賠責保険を通じて、後遺障害の申請をすることができます。しかし、加害者が自転車の場合には、自賠責保険がありませんので、自動車の場合と同じように後遺障害の申請をすることはできません。
しかし、加害者側が自転車の場合であっても、加害者が自転車事故の対人賠償保険に加入していたり、被害者が人身傷害保険に加入している場合には、対人賠償保険の保険会社を通じてか、人身傷害保険の保険会社を通じて、自賠責損害調査事務所による後遺障害認定サポートを利用することができることがあります。そのため、加害者側が自動車である通常の交通事故と異なり被害者請求による申請はできませんが、後遺障害の認定自体は、審査するところが同じですので、通常の交通事故と同じように等級認定を受けることができる場合があります。
この制度は、保険会社の担当者も知らないことが多いですし、専門家の書籍でも安易に自賠責保険と同様の認定する制度はない旨を記載していることがありますので、注意が必要です。
他覚所見があるかないか、高次脳機能障害の程度などで争いが出そうな場合には、自賠責損害調査事務所による後遺障害認定サポートを利用して、後遺障害の妥当な等級認定を受ければ、あとの手続きはスムーズに進むことが多いと思います。
2 加害者側の保険会社や人身傷害保険の保険会社による認定の利用
加害者側の保険会社や人身傷害保険の保険会社による認定を受けてみて、当該認定に依拠した解決を行うか検討する方法があります。むち打ちの症状による後遺障害14級9号や、保険会社も争いようがない種類の障害の場合(例えば、睾丸の喪失や歯の喪失等)には、有効な場合もあると思います。
ただ、他覚所見の有無や高次脳機能障害の程度が争いになるような場合には、他覚所見を否定(後遺障害12級ではなく後遺障害14級等)してきたり、高次脳機能障害について低い等級を認定する傾向があると思いますので、結局、自賠責損害調査事務所による後遺障害認定サポートか訴訟の利用を検討することになります。
3 労災保険による後遺障害認定の利用
通勤災害にあたり、労災保険を使用できる場合には、労災保険により後遺障害の認定を受ける方法があります。第三者による認定ですので、加害者側の保険会社も労災保険の認定を尊重することはあります。
4 傷害保険による後遺障害認定の利用
加害者側が対人賠償保険に加入しておらず、被害者も傷害保険にしか入っていなかった場合です。ただ、必ずしも等級認定の方法が、通常の自賠責保険を通じた後遺障害認定の方法と同じとは限りませんし、その等級の妥当性が争いになると思います。
5 訴訟による後遺障害認定の利用
加害者側が何ら保険に入っていなかったり、被害者も保険に加入しておらず、労災保険も適用がなく、加害者が被害者の主張する後遺障害の等級・内容を受け入れない場合には、訴訟により後遺障害の認定を受けるしか方法がありません。
自賠責損害調査事務所による後遺障害認定サポート等による認定があったとしても、妥当な内容でない場合には(一部のCRPSなど訴訟でないと認定を受けることができないものもあります)、訴訟による後遺障害認定を受けるしかありません。
自転車事故の場合には、通常の自動車の交通事故と異なり、自転車事故の特有の考慮しなければいけないこともありますので、骨折等の怪我を負われた場合には、早めに相談に来られることをお勧めします。
(弁護士中村友彦)