交通事故の被害者が治療のために通院することになった場合、その通院のための交通費を損害賠償として請求できますが、交通事故の被害者以外の者であっても、近親者が付添いのために交通費がかかった場合、それを損害賠償として請求できることがあります。
1 近親者の付添のための交通費
交通事故の被害者の近親者が付添いのために病院を訪れた時にかかる交通費は,交通事故の被害者の症状や年齢等から付添いが必要であると認められれば,損害賠償として認められます。名古屋地裁平成19年5月30日判決(交民40巻3号741頁)では、「原告は、独身であり、本件事故により、北海道から姉が6回見舞いに来て付き添ったこと、その航空運賃として5万9000円を要したことが認められ、原告の見舞いに要した交通費は本件事故と相当因果関係のある損害と認める。」として、交通事故の被害者の姉の交通費用として、航空運賃合計35万円余を損害として認めました。
2 近親者の宿泊費
大阪地裁平成3年9月12日判決(交民24巻5号1035頁)では、「大阪富山間の交通費並びにアパートの敷金及び賃料・敷金、宿泊費、布団代等のいわば滞在費については、個々の出費につき具体的数額を確定する客観的証拠が甲第19号証、第20号証及び第23号証等を除いては乏しいばかりでなく、それらの出費の必要性を全て認めるに足る証拠もないが、原告が負った傷害の程度及び事故地が原告らの住所地からは遠隔であったことを考慮すると、事故発生時においては原告の家族4人分につき大阪富山間の各一往復の諸経費として1人当たり金1万円の計金4万円、滞在諸経費として家族4人につき毎日1人あたり金4500円の計金18万円等」を損害として認めています。
3 交通事故の損害項目として認められなかったケース
近親者の付添のための交通費や宿泊費は、近親者の付添費用や入院雑費の中に含まれて評価され、損害として認められないこともあります(京都地裁平成24年9月26日判決自保ジャーナル1886号1頁)。(弁護士中村友彦)