交通事故の被害者が、その受傷の治療のために病院へ入院あるいは通院する場合、幼い子供がいれば、保育所等に子供を預ける必要がでてくることがあります。保育所以外でも、近親者や友人に子供を預けることも考えられます。これらの場合に、かかった費用などを交通事故の損害と認められるかが問題となります。
1 大阪地裁平成5年2月22日判決(判タ834号161頁)
大阪地裁平成5年2月22日判決は、交通事故で被害者が外傷性頸髄損傷、環軸関節脱臼、外傷性クモ膜下出血、脳挫傷の傷害を受け、四肢麻痺及び無呼吸の後遺障害が残った事案です。被害者の付添により母親が、被害者の弟の世話をできなくなったため、祖母に預けられ、その監護費用が問題となりました。上記大阪地裁判決は、交通事故の被害者の年齢等を考えれば、母親が付添に当たるのはやむを得ないものというべきであるから、被害者の弟の監護のために別に必要となった出費をも本件事故によるものとするのが相当であるとしました(ただし、これを交通事故の被害者の損害とすべきかは検討の余地があるところではあるが、この点につき特に争われていないので、被害者の損害として扱うこととするとしています)。そして、上記大阪地裁判決は、その費用として一日当たり3200円程度が必要であり、少なくとも、弟の監護は、弟が小学校に入学するまで必要であるものとするのが相当として約416万円を監護費用として認めました。なお、上記大阪地裁判決は、小学校に入学するまで認めることの理由として、「小学校入学程度の年齢に至れば、一応の事理弁識能力も備わる程度となるものと考えられ、また、法律上も小学校入学前後において、監護の必要性に関して異なる扱いをしていること(児童福祉法24条参照)からすると、監護が必要不可欠なのは右認定の程度であるものと考えられる。」としています。
2 京都地裁平成8年4月10日判決(交民29巻6号1899頁)
京都地裁平成8年4月10日判決では、交通事故により傷害を負い13日間入院した被害者が、未就学の幼児と小学校2年生の子を知人宅に預けて世話を受けた謝礼として支払った18万円のうち、1日当たり5000円の範囲で子供らを預けていた13日間分の6万5000円を交通事故との相当因果関係を認めました。 (弁護士中村友彦)