交通事故で傷害を負い、治療のために入院した場合、症状が重篤な場合や大部屋が空いていない場合、個室料が交通事故の損害として認められることがあります。しかし、それ以外で、治療の目的でなかったとしても、個室料が交通事故の損害として認められることがあります。
1 結婚式の打ち合わせ等の準備のため
名古屋地裁平成17年7月13日判決(交民38巻4号947頁)では、結婚式や披露宴の開催について、親族や婚約者との打ち合わせ等の準備の必要のために個室を利用したいと考え、結婚式の打ち合わせの必要性等のために個室を利用したいと話し、被告側保険会社の交通事故担当者はこれを承諾したこと、また、被告側保険会社の交通事故担当者は、原告の病院入院に際し、原告の治療費及び治療関係費について、被告側保険会社が支払を保証する旨の念書を差し入れていることを総合して勘案すれば、原告の病院における個室の利用も直ちに不相当であるとすることはできないとして、治療の必要性に加えて、結婚式の打ち合わせ等の必要性によるものであれば、結婚式までの個室使用料を認めるとしています。但し、結婚式後の個室利用については加害者側に負担させるのは合理的ではないとして否定されました。
2 介護入院によるもの
神戸地裁平成16年12月20日判決(交民37巻6号1683頁)は、交通事故により急性硬膜下血腫、脳挫傷、びまん性軸策損傷等の傷害を負い遷延性意識障害となり、後遺障害等級1級3号に該当する重度後遺障害を負った事案です。上記神戸地裁は、月額10万8500円の負担で、病院の個室に入院中であると認められるとし、症状固定日の翌日と口頭弁論終結日が属する月については日割計算をして、この間592日間の室料差額の計算をして、その合計額である210万3500円を交通事故による損害として認めました。
特別室を利用したことによる室料差額は、健康保険の適用の範囲外で患者に請求され、高額になることも多いですから、保険会社から支払わないと言われてもあきらめずに専門家である弁護士に一度相談してみるべきです。(弁護士中村友彦)