交通事故の被害者を見舞うために病院へ訪れた際にかかった交通費は、原則として損害賠償として請求することはできませんが、例外的に認められることがあります。
東京地裁平成10年1月30日判決(交民31巻1号148頁)では、「証拠によると、原告の入院中、原告の両親は高速道路を利用して自動車で、少なくとも120回は原告の見舞いに訪れていることが認められる。そして、前記認定のとおり太田福島総合病院の往復にはガソリン代、高速道路利用料金の合計7400円を要する。そして、前記争いのない傷害内容によると、原告の両親が見舞いのため右病院を訪れることは、その心情として理解でき、そのうち40日間を本件事故と相当因果関係がある損害と認めるのが相当である」とし、その傷害の程度から、見舞いをするのが心情的に理解できるとして、両親が行った見舞いについての交通費を損害として認めました。
また、札幌地裁平成13年12月5日判決(自保ジャーナル1443号15頁)でも、被害者の症状(脳挫傷、くも膜下出血等)から、週複数回の見舞いをすることは親を思う心情からは当然であるとして、見舞いのための交通費合計約60万円を損害として認めたものもあります。(弁護士中村友彦)