交通事故による損害は、定型的なものでいえば、治療費、交通費、入通院慰謝料、後遺障害慰謝料、後遺障害逸失利益などがあります。しかし、これら以外でも、交通事故と相当因果関係が認められれば、交通事故による損害と認められます。例えば、交通事故の被害者やその近親者が、予定していた旅行をキャンセルせざるをえなかった場合などには、かかったキャンセル料といったものは損害と認められています。
1 大阪地裁平成18年7月7日判決(交民39巻4号931頁)
大阪地裁平成18年7月7日判決では、交通事故の被害者が左脛骨内顆骨等の傷害を負った事案ですが、旅行解約手数料という項目をたてて「原告と原告の孫は、原告が本件事故で入院したことにより旅行をキャンセルせざるを得なくなり、六万円のキャンセル料を支払わなければならなくなったことが認められるところ、これは、本件事故によって発生した支出であるから本件事故と相当因果関係にある損害と認められる。」とし、旅行のキャンセル料を交通事故の損害と認めました。
2 東京地裁平成15年9月2日判決(交民36巻5号1192頁)
東京地裁平成15年9月2日判決では、交通事故で被害者が、頸椎捻挫・腰椎捻挫等の傷害を負い、通院期間18ヶ月を要した事案ですが、受傷内容や旅行が交通事故の36日後に予定されていた等からすれば、旅行のキャンセル料10万円は、交通事故と相当因果関係のある損害と認めるのが相当であるとしました。(弁護士中村友彦)