従業員の運転する社用車の交通事故の場合、雇い主は、交通事故の被害者に対して使用者責任・運行供用者責任を負い、交通事故の起こった原因によっては、道路交通法上の責任として罰則が科されることもあります。
1 運行支配・運行利益
運行供用者責任は、交通事故を起こした車両について、雇い主が、運行支配・運行利益が認められるのを要件として発生します。社用車は、雇い主が所有・管理し、かつ事業を行っているわけですから、通常、運行支配・運行利益が否定されることはありえないと思われます。下で紹介するような事案でも、運行供用者責任は肯定されています。
2 大分地裁平成5年10月20日判決(交民26巻5号1299頁)
大分地裁平成5年10月20日判決では、従業員が会社所有の社用車で死亡事故を起こした場合に、社内規則上からは使用運転は無断であり、違反であって、交通事故当時の運行も会社の業務そのもののためではなかったとしても、同車は会社が担当者の指定をして当該従業員に1台貸与しているものであり、当該従業員は、交通事故の前約3年間にわたり同車を運転管理し、通勤や営業活動等の仕事上使用するほか私用等にも運転使用していること、社用車については、仕事の都合で自宅に持ち帰ることも許可されており、交通事故当時も夜間営業の店舗を見て回るという仕事上の必要があったことから、上司の許可は受けることなく持ち帰っていたものであることなどを考慮して、会社に運行供用者責任を認めました。
3 最高裁昭和49年11月12日判決(交民7巻6号1541頁)
最高裁判決昭和49年11月12日判決では、従業員であったものが、退職後に会社から社用車を持ち出して交通事故を起こした事例で、会社の運行供用者責任を認めました。(弁護士中村友彦)