未成年者が、交通事故を起こした場合、親権者である親等が損害賠償責任を負う根拠は、民法709条や民法714条に限られません。親が所有する自動車で交通事故を起こした場合には、自動車損害賠償保障法3条で定められた運行供用者責任が問題になります。なお、交通事故を起こした車両が未成年者の所有であったとしても、その車両を親が管理等していれば、運行供用者責任が認められる可能性があります。
1 運行供用者責任が肯定されたケース(最高裁昭和49年7月16日判決民集28巻5号732頁)
最高裁昭和49年7月16日判決では、未成年の子がその所有車両を運転中に交通事故を起こした場合において、親が、車両を子のために買い与え、保険料その他の経費を負担し、子が、親もとから通勤し、その生活を全面的に親に依存して営んでいたなど原審(高松高裁昭和48年4月10日交民 7巻4号958頁)の事実関係があるときは、親は交通事故を起こした車両について事実上管理支配できたとして、自動車損害賠償保障法3条による運行供用者としての責任を負うとしました。
2 運行供用者責任が否定されたケース(東京地裁平成17年6月30日判決判タ1227号292頁)
東京地裁平成17年6月30日判決は、交通事故を起こした未成年者が親の扶養を受けていたものと認められるが、他方、加害車両の購入・維持管理は未成年者の名義・計算で行っていたこと、高校を退学し、月10万円から15万円程度のアルバイト収入を得ていたこと、親が加害者両を使用していたとは認められないことからすると、親との共同生活及びその扶養がなければ未成年者が加害車両を購入及び維持管理することが困難であるとは認められず、親が加害車両の運行を事実上支配管理することができ、加害者両の運行が社会に害悪をもたらさないように監視監督すべき立場にあったということはできないから、自動車損害賠償保障法3条にいう運行供用者には当たらないとしました。(弁護士中村友彦)