交通事故により負傷し、耳に傷害を負った場合、聴力の低下や耳鳴りなど種々の後遺障害が残存ずる可能性があります。自賠責後遺障害等級表で耳に関する後遺障害は記載されていますが、等級表に記載がないものであっても後遺障害の状態によって相当等級の認定を受けることがあります。
そして、耳に関する後遺障害の中の一種として、耳が欠けた(耳介の欠損)場合について、自賠責後遺障害等級表には、第12級4号「一耳の耳殻の大部分を欠損したもの」という定めがあります。自動車では少ないかもしれませんが、バイクや原動機付自転車など、身体を守るようなものが周囲にないような乗り物であれば、交通事故が起きると後遺障害として残存する可能性があります。
1 「耳殻の大部分を欠損したもの」
(1)耳殻
耳殻とは、耳介(耳のうち主に外部に出ている部分)ともいいます。耳には、耳介以外の部分も含むのですが、一般的には耳介の部分を指して耳といったりします。主に軟骨と皮膚で構成されています。
(2)大部分を欠損
耳介の軟骨部の二分の一以上を欠損したものをいいます。
2 後遺障害等級第12級4号に該当した場合の損害
他の後遺障害と同様に主に後遺障害慰謝料(280万円・大阪地裁基準)と後遺障害逸失利益です。
3 耳殻の大部分を欠損していない場合
耳介の軟骨部を二分の一以上を欠損していないからといって、何も認定されないとは限りません。耳は顔にあるのですから、その損傷の程度によっては、外貌に醜状を残すものとして後遺障害等級第12級14号に該当することはありえます。
4 外貌の醜状が大きい場合
耳介の欠損部分を含め外貌の醜状が大きい場合には、外貌の醜状に関する後遺障害として評価されることになります。具体的には以下のようなものです。
①第12級14号 外貌に醜状を残すもの
②第9級16号 外貌に相当程度の醜状を残すもの
③第7級12級 外貌に著しい醜状を残すもの
5 左右の両方の耳について「耳殻の大部分を欠損した」場合
左右の耳両方について耳介の二分の一以上の欠損したと言えるのであれば、左右の耳それぞれについて、後遺障害等級認定がなされ、併合して等級が繰り上がることになります。
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(弁護士中村友彦)