交通事故によって被害者の車両が損傷し修理や買い替えをしている間、被害者は他の車両を使用しなければいけませんので、他の車両をレンタルを受けて使用することがあるでしょう。このレンタルを受けた車両のことを一般的に代車といいます。
そして、この時に利用できる代車は、何でも良いかといいますとそういうわけではなく、一定程度の制限を受けることがあります。不必要な代車を使用したとして、代車料が損害となるかで争いとなるものとして、交通事故にあった車両が高級外車の場合に代車も高級外車を使用したようなケースがあります。
1 国産高級車のレンタル料金の限度で認められる傾向
原状回復という損害賠償の考え方からは疑義がありますが、裁判例の大まかな傾向は、下記裁判例のように、高級外車の代車は国産高級車のレンタル料金の限度で認めるというものです。
(1)東京地裁平成8年5月29日判決(交民29巻3号810頁)
東京地裁平成8年5月29日判決の事案は、ロールルイスの代車としてメルセデスベンツ(一日4万円)を使用しましたが、「原告が実際に代車に使用したメルセデスベンツのリムジン車である必要性は認められないが、国内最高級クラスの車両と認めるのが相当である。」として、一日あたり2万円を損害として認めました。この東京地裁判決で注意すべきことは、交通事故の車両を普段接待用等に使用していたことが考慮されており、そのような事情がなければより制限されていた可能性が高いということです。
(2)東京地裁平成7年2月14日判決(交民28巻1号188頁)
東京地裁平成7年2月14日判決の事案は、キャデラックの代車として電話付きのBMVを使用しましたが、「電話付きのBMWを代車として使用する必要があったことまでは認めることができず、代車としては、国産高級車で足りたものというべき」とし、最初の一日3万円、以降日数については追加料金として一日あたり2万円を交通事故の損害として認めました。この東京地裁判決でも、交通事故の車両が、原告の営業目的等で使われていたことを考慮しています。
2 高級外車の代車使用を認めた例
具体的な事情によっては、高級外車の代車を使用し、それが交通事故による損害として認めた裁判例もあります。主として、営業上等の理由から「高級外車でなければならない」事情があれば、高級外車の代車使用が認められ、そのような事情がなく移動等の必要性だけであれば制限されることになると思われます。
(1) 東京地裁平成8年10月30日判決(交民29巻5号1582頁)
東京地裁平成8年10月30日判決の事案は、交通事故の被害車両がメルセデスベンツ1991年型300Eであり、代車も同種を使用したという事案でした。被害者が、輸入車の販売等の仕事をしており、被害車両を顧客に乗せて販売の営業等を行っていた事情があったことから、高級外車の代車使用料として一日3万円を損害として認めました。(弁護士中村友彦)