足の全部又は一部を失った場合(下肢の欠損による後遺障害)

   交通事故でよく後遺障害が問題になる部位として、足(下肢)があります。その後遺障害の内容は、関節が動かなくなったり、痛みや痺れの症状が残存したり、変形したりや、足の全部又は一部が無くなってしまったりなど、部位と合わせて様々に分かれます。

 その中で、重大な結果として自賠責の後遺障害等級で定められているものとして、下肢の欠損障害があります。

1 下肢の欠損

  下肢の欠損とは、下肢の全部又は一部を失った場合をいい、下肢とは股関節のあたり(股関節から下というのは正確ではありません)から足指の部分までのことです。

2 三大関節

  股関節・膝関節・足関節のことを言います。それら以外にも、後遺障害の認定で問題となる部分としてリスフラン関節や足指の関節があります。

3 膝関節以上で足を失った場合

(1)両足(両下肢)を失った場合

  自賠責等級認定では、後遺障害1級5号に該当します。

(2)片方の足(1下肢)を失った場合

  自賠責等級認定では、後遺障害4級5号に該当します。

4 足関節以上で足を失った場合

(1)両足(両下肢)を失った場合

  自賠責等級認定では、後遺障害2級4号に該当します。

(2)片方の足(1下肢)を失った場合

   自賠責等級認定では、後遺障害5級5号に該当します。

5 リスフラン関節以上で足を失った場合

(1)リスフラン関節

   足根部と足先の真ん中あたりの関節で、足全体をその前後に2つに分けるところにあります。

(2)両足(両下肢)を失った場合

   自賠責等級認定では、後遺障害4級7号に該当します。

(3)片方の足(1下肢)を失った場合

   自賠責等級認定では、後遺障害7級8号に該当します。

6 足指を失った場合

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7 下肢の欠損障害で問題なる点(労働能力喪失率)

  足の全部又は一部が無くなったかどうかは、通常、画像等から明らかですし、既往症とかも問題となりえないですから、後遺障害等級認定が争点になることは少ないです。 問題となることがあるのは、労働能力喪失率です。裁判例では、自賠責より低い認定がされることがあります。

(1) 東京地裁八王子支部平成10年8月26日判決(交民31巻4号1229頁)

  東京地裁八王子支部平成10年8月26日判決の事案は、右大腿切断、右母指関節機能障害、恥骨結合離開の後遺障害が残存し、自賠責から後遺障害3級とされたものです。自賠責では、後遺障害3級の場合に労働能力喪失率は100%として扱われるにもかかわらず、上記平成10年東京地裁は労働能力喪失率を92%としました。

(2) 東京地裁平成12年5月31日判決(交民33巻3号920頁)

  東京地裁平成12年5月31日判決の事案は、右足下腿の切断が自賠責で後遺障害4級5号とされた事案です。自賠責では、後遺障害4級の場合に労働能力喪失率は92%と扱われるにもかかわらず、上記平成12年東京地裁判決は70%としました。  

8 自賠責後遺障害の一覧表

  足の全部または一部が無くなった場合の後遺障害の一覧は、以下のとおりです(足指を除きます)。

 

後遺障害1級5号

両下肢を膝関節以上で失った

後遺障害2級4号

両下肢を足関節以上で失った

後遺障害4級5号

1下肢を膝関節以上で失った

後遺障害4級7号

両足をリスフラン関節以上で失った

後遺障害5級5号

1下肢を足関節以上で失った

後遺障害7級8号

1足をリスフラン関節以上で失ったもの

(弁護士中村友彦)

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