先日、交通事故事件(自動二輪車と車両の交通事故)の示談がまとまり、依頼者とその家族からコーヒーとお菓子を御馳走になりながら世間話をしている中で、自転車事故の話題になり、その際に自転車は歩道のどこを走ったらよいかをという質問がありました。当事務所が扱った案件でも、自転車の歩道の走行場所が過失割合で問題になった事案がありました。
1 自転車は歩道を走れるか
(1)歩道
歩道とは、道路交通法2条1項2号では「歩行者の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によって区画された道路の部分」とされています。
(2)原則歩道を走行はダメ
道路交通法17条1項では、「車両は、歩道又は路側帯と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。」と規定しており、自転車は軽車両として車両に属しますから、車道と歩道の区別があれば、自転車は車道を走行しなければならないことになります。
もし、道路交通法17条1項に違反した場合、3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金の可能性もあります。
(3)例外的に歩道を走行するのは可能
しかし、現実では、自転車は普通に歩道を走っています。これは、例外的に自転車は歩道を走行できる場合があると規定されているからです。
道路交通法63条の4では、例外的に自転車が歩道を走行できる場合を3つ定めています。
①道路標識等により普通自転車が歩道を通行することができるとされている場合
②普通自転車の運転者が児童・幼児のほか70歳以上の者・身体障害者などの車道を通行することが危険であるとして政令で定める者である場合
③その他、車道又は交通の状況に照らして普通自転車の通行の安全を確保するため歩道を通行することがやむを得ないと認められる場合
(4)例外の例外として歩道を通行できないことがある
例外的に歩道を走行することができる道路交通法63条の4の事由に該当する場合であっても、さらに例外的に歩道を走行できないとされることがあります。
それは、警察官等が歩行者の安全を確保するため必要があると認めて当該歩道を通行してはならない旨を指示したときです。歩道にたくさんの人がいるにもかかわらず、無理矢理自転車で通ると交通事故の起きる可能性が高いですから、そのような事故の起きる可能性を防ぐためです。
なお、もし警察官の指示に従わなければ、3ヶ月以下の懲役又は5万円以下の罰金の可能性があります。
(5)道路交通法63条の4の歩道を通行することがやむを得ないと認められる場合
歩道を通行することがやむをえないと認められる場合とは、自転車の運転者の主観的な認識では足りず、客観的な状況が必要です。例えば、車道に駐車車両がたくさん存在し、車道の左側端を走れず、駐車車両の右側から通行しようとすると車道を走行する自動車との関係で交通事故が生じる危険があるような状況です。
2 自転車は歩道のどの部分を走行できるか
自転車が歩道を走行できるとしても、歩道のどの部分でも自由に走行できるわけではありません。現実的には、誰も守っていない(知らない)ような気がしますが。道路交通法では一定の規制を設けています。
道路交通法63条の4第2項では、自転車は歩道の中央から車道寄りの部分(道路標識等により普通自転車が通行すべき部分として指定された部分)を走行しなければならないと定めています。一般の人は、自動車と同じで左側を走行しなければならないと思っていますが、勘違いで自転車は独自の通行の規制があるのです。
仮に、道路交通法63条の4第2項に違反した場合には、2万円以下の罰金または科料という可能性があります。
(弁護士中村友彦)
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