交通事故で被害者が死亡したため、被害者の遺族が損害賠償金等を受け取ったときは、所得税法では、心身に加えられた損害につき支払を受ける損害賠償金は非課税とされていますから、交通事故などの加害者から被害者の死亡に対する損害賠償金を遺族の方が受け取った場合には、所得税はかかりません。そして、所得税がかからないだけでなく、さらに相続税も非課税になります。被相続人の交通事故死を原因として支払われる慰謝料などの損害賠償金は遺族に対して直接支払われるものであって、相続税法2条にいう相続財産に該当しないと考えられることから、相続税法上相続税の課税対象とはなっていません。但し、物的損害については課税されることに注意が必要です。
また、交通事故の被害者が損害賠償金を受け取ることに生存中決まっていたが、受け取らないうちに死亡してしまった場合には、その損害賠償金を受け取る権利すなわち債権が相続税法2条にいう相続財産となり、相続税の対象となってしまいます。
なお、保険金等の種類によっては課税されることがあります。
1 遺族固有の慰謝料
遺族固有の損害ですから、そもそも相続税は関係ないですし、積極的な利得もないですので、所得税も課税されません。
2 人身傷害補償保険
傷害や後遺障害に関する保険金は、所得税法上非課税とされているため、受領した保険金については税金は課されません。
しかし、死亡保険金については課税されることがあります。人身傷害補償保険は、交通事故で、自分にも過失があり、本来は自分の過失分が過失相殺される場合でも、本人の過失が相殺されずに損害額の全額が支払われます。死亡保険金全額のうち、本来は加害者の過失分については、損害賠償金の性格を持つものなので非課税となりますが、自分の過失分については課税対象になります。課される税の種類については、原則その保険の保険契約者が誰であったかによって異なります。保険契約者と保険金受取人が同じ場合(死亡した被保険者は別の人)は所得税の課税、保険契約者・被保険者が死亡した者で遺族が保険金を受け取った場合は相続税の課税、保険契約者が死亡した者ではなく、保険金の受取人でもない場合は贈与税という形になります。
3 搭乗者傷害保険・自損事故保険
傷害や後遺障害に関する保険金は、税金は課されません。死亡保険金は、保険契約者、被保険者、保険金の受取人が誰になっているかによって、所得税・相続税・贈与税のどれかがかかります。
4 無保険車傷害保険・車両保険
受領した保険金については税金は課されません。(弁護士中村友彦)
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