改正道路交通法の平成27年6月1月施行により、自転車に関して従来は存在しなかった自転車運転者講習が始まります。今までは、自動車に関しては、運転者に関する法定講習その他の講習(道路交通法108条の2以下)がありましたが、自転車にはありませんでした。
自転車による交通事故の重大さが注目されてきたためか、道路交通法が改正され、この自転車運転者講習が設けられましたが、この制度の導入により、今後は自転車の運転に関して取締が厳しくなる可能性が高いです。最近、大阪市内でも、自転車の赤信号無視を取り締まっているのを見かけることがあるようです。
1 自転車安全運転講習
道路交通法施行令41条の3に規定された危険行為(14類型)にあたる行為を反復した者に対して、自転車の運転による交通の危険を防止するために公安委員会の受講命令により実施されるのが、自転車安全運転講習です。危険行為を3年以内に2回以上反復して行った自転車の運転者(14歳以上で、交通違反切符を交付された者)に対して行われます。講習時間は3時間程度で講習手数料5700円を払わなければなりません。受講命令に従わない場合には、5万円以下の罰金となります。
(1)対象となる危険行為(14類型)
①信号無視(道路交通法7条)
②通行禁止違反(道路交通法8条第1項)
③歩行者用道路における車両の義務違反(道路交通法9条)
④通行区分違反(道路交通法17条1項、第4項又は6項)
⑤路側帯通行時の歩行者の通行妨害(道路交通法17条の2第2項)
⑥遮断踏切立入り(道路交通法33条第2項)
⑦交差点安全進行義務違反等(道路交通法36条)
⑧交差点優先車妨害等(道路交通法37条)
⑨環状交差点安全進行義務違反等(道路交通法37条の2)
⑩指定場所一時不停止等(道路交通法43条)
⑪歩道通行時の通行方法違反(道路交通法63条の4第2項)
⑫制動装置不良自転車運転(道路交通法63条の9第1項)
⑬酒酔い運転(道路交通法65条1項のうち、道路交通法117条の2第1号に規定するもの)
⑭安全運転義務違反(道路交通法70条)
(2)安全運転義務違反
①から⑬までの危険行為は分かりやすい(但し、一般の人はあまりに知らないと思いますが)ですが、特にどういう内容の行為が該当するのか分かりづらいのが⑭の道路交通法70条に定める安全運転義務違反です。道路交通法70条では、「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」としか規定されていません。今後、自転車の危険行為の摘発が頻繁になされれば、この条文の解釈が争われるかもしれません。
2 赤切符の交付
赤切符とは正式名称ではなく、交通反則通告制度の対象となる反則行為に該当しない道路交通法違反(人身事故を伴うものを除く)に対して交付される告知票の色から呼ばれているだけです。一方で、青切符と呼ばれるものは交通反則通告制度により交付される交通反則告知書の色から、そう呼ばれています。
自転車の場合、交通反則通告制度の適用対象外ですので、赤切符が交付されます。赤切符は簡易な手続きとはいえ、刑事事件となり「前科」がついてしまいます。
自転車の交通事故が着目されるようになってきたために、道路交通法等を含めて法律はどんどん厳しくなっていくかもしれません。ただ、一番大事なことは交通事故を起こさないことですので、安全に運転することを心がけましょう。そして、一度、交通事故が起きると多大な損害賠償義務を負う可能性がありますので、被害者のためにも保険にはしっかりと加入するべきです。
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(弁護士中村友彦)